「………アレン、さっきの話……、僕の事はユウに黙ってて」

「え?神田だけには、あれは言うべきじゃないですか?」

「お願い……、ユウだけには言わないで……(知られちゃいけない。……特に、ユウには)」




「恭弥、結局お前が呼ばれた理由はなんだったんだ?」

「さぁ、知らない」

「(恭弥の様子が昨日からおかしい。……まるで、俺があいつを拾った時のような…)」

窓の縁に体を預けてずっと上の空で返事もろくにしてこない雲雀に神田はイライラしながらもそれを飲み込んでいた。しかしその場から離れようとせず、そのままいつものように筋トレを始めようとする神田の耳に小さく声が聞こえた

「……僕は…、消えたりしない……」

「?恭弥、お前は何を隠してる」

「何も」

「何を隠してるって言ってんだよ」

「ユウには関係ない」

「……。お前、何をそんなに怖がってる」

「ユウに……、僕の何が……!僕の何がわかるの!?今まで、僕がどんな気持ちで、こんな場所にいるのか分からないくせに!」

「おい、止めるさ!」

「煩い。Jr.は引っ込んでなよ。僕のこと知って正直気味が悪いんでしょ!?

ユウも、みんなも、これ以上僕に関わらないで!」

「関わらないで、か。……だったら何で泣くんだ?」

神田を叩こうとした雲雀の右腕が止められて、仏頂面のまま問う神田。その目に涙はなく、問われた雲雀本人だけでなく、止めに入ったラビも呆然とする

「は……?」

「泣いてる?どこがさ?」

「は、何、ユウ……頭でも打ったの……?」

「泣いてるだろうが。気づかねぇのか?」

「本当、婦長にでも診てもらったら?」

怪訝そうに雲雀は神田を見ると雲雀の胸ぐらを神田が掴みあげる。その顔には怒りが募っており、表情を一変させてバツが悪そうに目を伏せた

「さっきお前は自分の何が分かる、って言ったよな?お前なんか知るか。お前は俺じゃないんだ。他人のことが分かるやつなんて一人もいねェんだよ」

「!!」

「頼むから、一人で何もかも抱え込むな……。全部話せとは言わねェから、少しくらいは俺に背負わせてくれ……。お前は独りじゃないんだ、俺に吐き出せ……!何でも受け止めてやる」

胸ぐらを掴む手を外して雲雀を抱き締める。神田の方が身長が高いため自然と顔を胸に埋めさせる形になる雲雀は鼓動を聴きながらその目には徐々に涙が溜まっていき─……

「……っ、消えたく、ない……っ、消えたくないよ……、まだユウと一緒にいたい……!」

「ずっと側にいてやるから」

涙を流しながら嗚咽混じりに本音を漏らした雲雀を宥めるように何度も背中を擦る神田を見たラビとアレンは静かに部屋を出ていく。しばらくその部屋では嗚咽が聞こえていた










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