「……がはっ……っ、」

「あっけないですね」

「……うるさ、い……っ……!」

攻撃の爆風に巻き込まれ壁に叩きつけられた雲雀の体の至る所からは出血が見られ、息切れもしていた。出血多量により視界も霞んできたのか目を細めながらも眼前にやってくるレベル4を睨む。そんな雲雀をレベル4は首をつかみ壁へと押し付ける

「(目も、霞んできた……)」

「まだしなない。ないぞうをこわしたらしにますか?」

「ぐっ………っ、」

「よくもホームをめちゃくちゃにしたわね。その汚い手を離しなさい」

「またあらてか」

「リ、ナ……」

「はっ!!」

イノセンスを発動させたリナリーが現れるとレベル4の横腹に蹴りを入れると雲雀は手から解放され、そのまま落下していくが、衝撃に対し受身を取れなかったが来るはずの衝撃はこなかった

「(衝撃が来ない……?)」

「……大丈夫か?」

「ユウ……?」

「ああ」

短い返事に雲雀は力なく笑う。しばらく雲雀の体を凝視してから神田は雲雀に負担をかけないように瓦礫に体を預けさせる
特に出血の酷い脇腹や足から傷が治癒していき、やがて呼吸が安定していく

「ユウ……僕、頑張ったよ」

「そうだな。お前は頑張った。だから、今は動くな」

「うん……。今の攻撃……リナ、避けた。(さっきも気になったけど、遥かに速さが上がってる。イノセンスが、進化した……?)」

雲雀の視線の先には遥か上に飛んでいたリナリーとその最中に彼女に助けられたアレン。その2人とレベル4の戦闘が激しく繰り広げられているものの、速く、神田とラビは追いつくことが出来なかった

「恭弥は見えたらしいけど、ユウ、見えた……?」

「……見えなかった……」

レベル4と戦闘をしているリナリーとアレン。彼女達は互角に戦っていた。そんな中、先程コムイから預けられた雲雀の耳に付けられている無線機にノイズ音が入る

──ピ…ガガッ…

《……うや……恭弥》

「クロス……?」

《起きたみたいだな》

「なんとかね……で、生きてるんだ」

《ったりめーだ。餓鬼はそこから離れてろ。恭弥、テメェに手伝わせることがある。イケるな?》

「相変わらず暴君。ユウ、クロスがここから離れろ、って。……僕は少し行ってくる」

「おい……!」

「大丈夫、死なないよ」

身を預けていた瓦礫から立ち上がり、雲雀は出血を止めた後レベル4のいる場所とは違う方向へと歩き出す。その行動と共にコムイの無線へと声が届き、壁が吹き飛ばされる

《撤退は中止だ、コムイよ》

「このビールッ腹野郎が、実験サンプルにしてやる」

「クロス元帥……本当に……」

《他に誰に見える》

──ザザ…ザザ…

《…ちょ…室…長……》

「リーバー……リーバー班長か!」

続いて無線からクロスの声ではなく、リーバーの声がしたことに更に目を丸くするコムイ。リーバーは無線越しにコムイへと状況を説明していく

《すみません……今、意識が戻って……自分達は第五研究室の下……瓦礫と炎の中に……詳しい位置はわかりませんが……ミランダの《時間停止(タイム・アウト)》の中にいます。《抱擁ノ庭(メーカーオブエデン)》も視認できます……みんなまだ生きてます。頼みます……消火を……っ》

「分かった、すぐに消す!もう少し頑張るんだ!ミランダの消耗を少しでも抑えられるよう体をできるだけ寄せ合って《時間停止(タイム・アウト)》の範囲を小さくするんだ」

「(……恭弥くんの姿が見えない。クロス元帥の元に向かったことしかわからない……)クロス元帥」

《何だ》

「私は上に戻ります。アレン、リナリーと共に目標の破壊、頼めますか」

《言われるまでもない。行っていいぜ、室長。恭弥も心配いらねぇ。馬鹿弟子並みにしぶといからな》

「人使い荒すぎでしょ。……こっちは大丈夫だから化学班の方にいってきて」

クロスの言葉に溜息をつきながらも雲雀が近くにあった石の破片を弄びながら雲雀はクロスへと近づいていく。その一方でコムイは神田とラビへと声をかける

「大丈夫か!?」

「もお動けねェ〜」

「すまない、武器のないキミ達を戦わせて……」

「はあ?テメェに謝られる筋合いはねェ。アクマと戦んのが俺の仕事だ」

「はぁ……今更すぎるよ、コムイ。僕は今から少し手伝わなきゃならないらしいし」

「ユウと恭弥ってばマジ男前……」

か細い声で返すラビと息を切らしながらもツンとした態度を貫く神田。雲雀が肩を鳴らしながら答えていた。その返答を聞きながらヘブラスカの間を去ろうとするコムイにリナリーは叫ぶ

「兄さん!?研究室に生きてる人がいるの……?」

「そうなんですか、コムイさん!?」

「アレン、リナリー。……ああ!」

それを聞いたリナリーは喜び、アレンは嬉し涙を流していた。そんな光景を見ながら雲雀は無線機へと声をかける

「クロス」

──ザザッ……

《恭弥、、聞こえてるな》

「うん、聞こえてる。足止めでいいんでしょ」

《そうか。少しでいい。無茶はするなよ?》

「言われなくても。後で事情しっかり説明してもらうから」

雲雀はうっすらと笑みを浮かべて壁伝いにレベル4へと近づく。そこにはアレンの退魔の剣が真っ直ぐレベル4を貫いており、抵抗するように剣の刀身を鷲掴みにしていた

ギギギギ――――

「いの……せ……ん…す」

「なに……っ!?」

「!」

「きらい、きらい、きらい…いのせんすだいきらいいいっ!」

「……しぶといやつ」

レベル4の手に光が集まり、アレンの頭に近づけて放つ。それをリナリーとアレンは辛うじて避けるが、攻撃の手が緩むことで隙を与えてしまう

「ぐっ……」

「がぁあぁあああああっ」

「!!」

レベル4はお腹に刺さっていた退魔の剣を引き抜いてアレンの真横に投げつけるとそれは壁に突き刺さる。

「は……はぁ…は…、ははは……は…ははは…は…。あまいね…このぼくがこのくらいでこわされるわけないでしょうッ…」

「いいや、お前はブッ壊れたんだよ」

「君は僕達が壊す」

レベル4は嗤っていたが別の声が現れた時そちらへと目線をやる。そこには、壁に突き刺さった剣の上にクロスと雲雀が乗ってレベル4を見下ろしていた


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