「……で、何の用かと思ったら何、この体勢……」

雲雀はムスッと頬を膨らませていた。今の雲雀の位置は神田の近くでも、椅子の上でもなく、椅子に座るクロスの膝の上に座らされていたのだから

「ユウと一緒に行きたかった……」

「まぁ、そう拗ねるな」

「あの……元帥と恭弥君は……」

「僕が教団を離れている間に少しね。……クロス、僕に用があって呼んだんでしょ」

「どうせ今回も無茶してたんだろ。広がってるぞ、痣」

「……別に今回は後悔してない。それと、貴方の馬鹿弟子との任務の時に1回縮まった」

「あの馬鹿弟子が。つってもお前のソレを知ってるのは小数だろけどな」

煙草をふかしながらクロスは雲雀の腕を一瞥する。その腕を抑えながら雲雀は飽きたと呟きながら膝の上から飛び降り窓枠へと歩いて壁へと身を預ける

「まぁ……。本質を知っているのはユウとコムイ、元帥達と千年伯爵。まぁついさっきノア……いや、カルテ・フォーロはコレを知ってるみたいだった。他は詳しくは知らないよ」

「どういうこと?」

「リナは知らない方がいい。これは僕が抱えた罪だから」

「……恭弥君ばっかり、ズルいよ。アレン君も神田も、ラビも……みんな、自分のことは関係ないって言って……っ」

「……ごめん。これだけはどうしても言えないんだ。言えばきっと……手離せなくなる」

「恭弥、変わったな。あの頃はあんなにあの餓鬼ばかり気にしてやがったのに」

「……僕はユウの望みが叶うまで側にいる」

クロスはそうか、と返してから再び煙草をふかす。窓から外を見ていた雲雀はクロスからクロウリーへと視線を移すとそこにはソファに横になっているクロウリーの姿はボロボロで目を覚ます気配がない

「かなり体を酷使した戦い方をしたようだな。当分昏睡したままだろう」

「私達の中で傷が一番ひどい……」

「(恭弥の方が酷いが、隠してるなこいつ……)」

「クロス、言ったら殺す」

「(相変わらず物騒な野郎だ)…………。肉体が超人化するイノセンスに救われたな……。早く目覚めさせたいなら、いい治療を受けさせて体を癒してやることだ」

「クロウリー……ごめんね……」

「昔より感情が自然に出るようになったな、リナリー。それに、美人になった。恭弥は男なのが惜しいくらいまで麗人になりやがって」

「そ、そんなこと。元帥は相変わらず神出鬼没。一体いつから方舟(ここ)に?」

「城下でお前達が戦っていた時な。オレもあの場に居た。聖母ノ柩(マリア)の能力で、方舟に紛れ込むベストのタイミングがあの時だった」

だが……と言葉を続けながらクロスは煙草を消すと立ち上がり窓のそばに居た雲雀を抱き寄せる。そして左手で雲雀の頭を自分の胸元に押さえて、右手はリナリーの頬へと手を添える

「こんな美人と恭弥がいるなら、もっと早く出てくればよかったかな?リナリーの髪は惜しい。綺麗だったのに。恭弥に至っては身体中傷だらけだな……その命を散らせるのも惜しい」

「ちょっと……、クロス……!苦し……っ」

「アニタさんも、こうして同じことを言ってくれました」

「!…………そうか……。……何があっても跡を追うなと言ったのに、いい女ってのは一途すぎるよな……」

「元帥……」

「…………。あ、ユウがくる」

ふと雲雀が零すと同時にバタンッ!っと大きな音を立て、方舟内の探索のため外に出ていたアレン達が駆け込んでくると皮切りに叫び始める
雲雀は体制を変えないまま神田がいるであろう場所にひらひらと手を振る

「犯罪です、師匠!!」

「遅かったか───っ!」

「ちっ、違うのアレンくん今のは……」

「恭弥から離れろッ!!」

「なんだ、馬鹿弟子と餓鬼。16なら立派な女と男だろうが」

「元帥!!」

「はぁ……まったく。ほんと変わらないよね、ロクデナシ」

クロスから雲雀を引き離して神田は自分の元へと引き寄せる。雲雀は小さく溜息をつきながらクロスを見据える。いつものことだと思いながらも雲雀が神田を宥める

「恭弥無事か、無事だな」

「まぁいつものことだからね」

「……恭弥に手ェ出したらぶった斬る」

凄い剣幕で神田が言い放つと雲雀以外の全員の口元がひきつらせる。その様子を遠巻きに見ながらアレン達は顔をひきつらせる

「「「(怖ぇ……)」」」



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