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「奴を……許すな……」
「!!」
「うそだろ…、まだ……っ」
「あいつ……っ」
「(デカいのを撃とうとしてやがる!俺の後ろには…………)」
背後の建物に目をやりながら神田は六幻を構え直すと雲雀も同じ考えに行き着いたらしく、烈火を構え直す。それぞれ刀身はボロボロになっており、あと少しで破壊されてもおかしくない、という状況
「(六幻……耐えられるか)」
「烈火……あと少しだから」
スキンの口から放出された攻撃に耐えようと二人は武器を強く握りしめる。雲雀は周辺に意識を向けるが気配が自分たちの他に1つしかないことに不思議と安堵していた
「(カルテの気配はないか。……なら目の前のこの甘党にだけ集中すればいい)」
「(クソ……!)三幻式!!(耐えてくれ、六幻!俺の命を──)吸い高まれ、六幻!!!」
「くっ……っ(ユウと一緒に戻るんだ……教団に……!)」
「おぉおおおおぉおおおぉぉおおおおぉ」
神田と雲雀、スキンの力がぶつかり合い衝撃により周りの岩石は溶けていく。そんな中、力が増してきたスキンの攻撃に雲雀が小さく声を漏らす
「うそ……どうして……」
「(あいつの体のどこから、こんな力が出てくるんだ)」
「イノセンスは、許さ…ない」
【許さない……イノセンスも、ノアも。あの人を、返して】
「!?……ゲホッ……ぅ、」
「(ちっ……恭弥の体にガタが来はじめたか……?)」
「ユウ……僕はだいじょ、ぶ……(なんだ、何に対して今、許さないって……違う、今はそんなことどうでもいい!)」
「……早く終わらせるぞ」
「うん……」
雲雀が頷いたのとほぼ同時に神田の六幻が砕け散り、雲雀の体が風圧によって飛ばされる。その姿を見ながらスキンは神田と雲雀のいた場所まで歩きだす。その体の左側は抉れてしまっており存在していなかった。やがて、立ち止まったスキンの目の前には動かない神田の姿
「やった……壊した……奴を……。くっ……ギャハハハハハハハ!!あはははははは。!?今……足の下を何か……(光が……それに一人……いや…)」
「吸え……ムゲ……ン」
「!?なんだ……光が……」
「君の相手……は、一人じゃない、よ」
「砕けたイノセンスの刃を、繋げていく……っ(それに今の声)」
「命を吸う、三幻式だ……」
神田の梵字の周りから伸びていた跡が肩口から背中へと広がっていく。それに呼応するように雲雀の腕に伸びる模様が大きくなっていく。雲雀がスキンの背後から烈火を構える
「俺の刀はまだ死んでねェぞ……ッ」
「剣戟──風神……!」
斬、と神田の破片から戻った六幻がスキンを真っ二つに、そのスキンの背後からは雲雀の似た剣戟が襲い、背中に八つの傷跡がつけられる。
「これで、ホントに終わりだ……」
「わかってねェなあ……言っただろ……ノアは不死……だ。まだ……終わってたまるかよぉ〜」
その言葉を最後に破裂するようにスキンの体が砂へと変わっていく。その姿を後ろに感じながら神田が呟き、烈火の刀身が刃こぼれした刀身が風と共に手の中から消えていく
「うる……せェよ。終わっとけ……」
「……烈火……壊れちゃったな……」
「ち……コムイの奴に頭……下げね……と、な…くそ……」
「嫌だな……頭下げるの……。何か言われそう、だし……」
雲雀は力が抜けたのか天井へと仰向けになりながら力なく苦笑いをする。そんな雲雀の傍に神田が寄りかかるように座り込み、雲雀の手を握ると苦笑いから幸せそうに微笑んだ
「ユウの手……あったかい……」
「恭弥も、な……」
「帰ったら、ご飯食べて……組手して……沢山寝たいな……」
「あぁ……」
「……ユウ、」
ガラガラ……と音を立てて出口があった背後の建物が崩れていく
その崩壊に巻き込まれる二人の口許には笑みが浮かんでいた
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