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「コムイ達から?」
「《最新の団服です》って。みんな、もうボロボロだろうから渡すように頼まれたの」
「軽くて動きやすいさっ」
「でも結構丈夫だよ、これ。ってか跳ねるな、ガキか」
「しばらく会わないうちに恭弥、口悪くなってね?」
「全然。それより、リナは……」
「心の整理がつかんのだろう。リナ嬢は昨夜アレンの側を離れたことを悔いておる。自分を責めているんだ」
ガシャンッ!!
「「(ビクッ)」」
「いい加減にしろよ……。仕方ないことだったんさ……っ、オレらは昨日必死に戦った。どうしても、助けらんなかったんだよ……っ
戦争なんさ、しょうがねェだろ!諦めて立てよ!!」
ラビが船の窓ガラスへと拳を叩きつけながら叱責するとリナリーの頬に涙が伝う。そんな様子を見かねたブックマンがラビにコブラツイストを繰り出している間にリナリーへと近づいたのは雲雀だった
雲雀は腕組みをしてリナリーの前に立つと失望したかのような声音でリナリーに対して口を開く
「側で見てれば……呆れた。リナ、そんなに弱かったっけ、君。そんなんじゃ、君が次に死ぬよ」
「……恭弥くんは、何とも思わないの……?」
「思わないね。僕にはアレン・ウォーカーはただのクロスの弟子、それだけの存在。どうなろうが構わない
君の世界と僕の世界は似ているけれど、僕にとってはユウとそれ以外。それだけだから」
「……っ、」
「……私には《時の破壊者》と預言を受けたあの小僧が死んだとはどうも信じられん。室長殿に頼み込んでクロス部隊に入れてもらったのは、あの小僧に興味があったからでな
時の破壊者の《時》とは、ある人物を指しているのではないかと」
「《時》、即ち《千年》。《千年を破壊する者》……か」
「うむ。やはり雲雀は知っておったか。アレン・ウォーカーは千年伯爵を破壊する者ではないだろうか。ならば、こんな所で死ぬハズは無い」
「しっかし、アレンがねぇ……」
甲板でティムのメモリーを見た後に手で弄びながら雲雀はため息を吐いた。なるほど、と告げながら目を閉じてティムの頭を撫でる
「……馬鹿らしい」
「雲雀よ、リナ嬢に嘘を告げたな」
「やっぱり、貴方は気付いてたか……」
「小僧のイノセンスが破壊されたことを、他人事のように言えないのだろう?それにお主はアレン・ウォーカーの姿を探せるのではないか?」
「さっきのは半分本音だよ。でも……アレンは生きてる。そう感じるんだ。それに今の僕はアレンの気配を察することは出来ない
加えて、再び戦場(こっち)に戻れるかが分からないんだよ。ノアの一族は……イノセンスとは対極の存在だからね」
「!雲雀…知っておるのか、ノアの一族を」
「こっちに合流する前に一度対峙した。イノセンスを破壊する強みを持っているけれど……イノセンス自体からの攻撃も彼らの弱み」
「…………」
「これ以上、ノアについては話すつもり無いよ。ブックマンは中立でなくちゃ。戻ってチェスでもしないかい、ブックマン」
「(何だ、この違和感……)ワシは構わん」
「(アレンが生きていることは知っているけど、それを告げるとリナリーたちはきっと立ち止まる。先に進まなければならないこの時に足止めはできない)」
口角を上げる雲雀がブックマンには別人のように見えていた
それをしかと見つめながら、ブックマンは雲雀の後をついていく。