外では蝉がミーンミーンと口うるさく叫んでいる。
私は地下室までの廊下と螺旋階段を走ってきて、汗だくになってしまった。走ってる間に見えた空、木々、草はとても青く、とても輝いていて、美しかった。
自分で呼んだんだから冷たいお茶くらい出してくれても良いのにな。先生は相変わらず意地悪だ。でも地下室はいつも通りひんやりしてて気持ち良い。
「先生何してるんですか?」
「見て分からんのかね、君達のレポートもどきを読ませて頂いているのだよ。我輩には理解しかねる内容の素晴らしいレポートばかりだ。うむ、特に君のレポートは素晴らしい。」
「相変わらず厳しいですねー。」
「事実を述べたまでだろう。」
「ま、確かに適当に書いたレポートだから仕方ないかもしれませんね、そう言われちゃっても。」
「やはりな。」
「はい、眠くて眠くて頭が回らなかったんですよ。」
「何を言っている。君は今まで頭が回ったレポートを書けた試しがあると思っているのか?」
「え?」
「もし、あると思ったならば、それは間違いだ名字。」
「何それ酷くないですかー?」
「よってこのレポートもどきは書き直し。」
「え、だって明日から夏休み・・・。」
「一週間後に持ってきなさい。」
「え、列車に乗って?」
「君の家の近くの公園にポートキーを用意しておいた。」
「わお!さすが先生!ポートキーどんなのですか?」
「ハート形のゴムボールだ。」
「・・・ハート形だったら、ボールの役目を果たせなさそうですね。」
「・・・確かにな。では名字、一週間後にまた会おう。この下らんレポートの十倍は良いものを書いてくるように。」
なんだかんだいってさ、
「君が長期休暇中に学習を怠っていないか確かめるために我輩も時々そちらに向かうからな。油断せぬように。」
「先生、私の事すごく好きなんですね。」
「なっ、なななななにを言っているのだ馬鹿者!」
「せんせ?私ね、わざとレポート変に書いたんだよ。」
「ん?どういう意味だ?」
眉を寄せて考えている先生が急にこちらを向いて柔らかく微笑んだ。
「そういうことです。私も先生のことが大好きなんですよ。」
「そうか。」
「はい、大好きなんです。」