「外で遊んだらどうだね。いい天気だ。校庭に出るといい」
退室しろと言わんばかりにスネイプが睥睨する。
名前は負けじと ほほえんだ。
「外より室内で読書するほうが好きなんです」
「たまには外に出るのも一興だ。青い空の下、本を読むのもいいだろう。名字のように優秀な生徒は、部屋にこもってばかりいる。
最近、空を見上げた事は」
不意に問われ、名前はまさか、と首を横に振った。
「ないですね」
思うわけがない。今日は晴天だから空を見上げてみよう、なんて。

「見上げよう、という発想すらないのだろう」
見透かしたようにスネイプが言い、名前は内心まごついた。
時々 彼は、心が読めるのではないかと思う。
暗く冷たいスネイプの眼に見据えられては、どんな人でも畏縮する。
それは好意を寄せる名前も然り。
「スネイプ先生だって学生のとき、どうせ本の虫だったんでしょう。青白い肌が物語ってますよ」
自分を奮い立たせ、名前は悠然と言い返した。相変わらずの皮肉屋だが、からかいまじりの発言だと分かったから。

「ああ言えばこういう……」
「でも先生、私の事、他の生徒より気にしてるでしょ」
名前は形のいい唇を つり上げ、スネイプの顔を覗き込む。屈んだ拍子に赤い髪が頬のあたりでさらさら、揺れ、スネイプは そっぽを向いてしまった。
「何を根拠に」
ぶっきらぼうに、スネイプは問う。

少女は少し考える素振りをしてみせたあと、濃い青色の眼を細めて微笑した。
「スネイプ先生、私の後ろ姿が好きなのよ。時々じーっと見つめてる。視線を感じて振り向くと、ほんの一瞬、いつも先生と目が合うの」

スネイプは採点していた手を休め、確信ありげな名前を見返す。

勘違いするな、とか おめでたい奴だ、なんて嫌味が返ってくると思っていた。なのにスネイプは予想に反し、ただ名前を見つめるだけ。
時が止まったような気がして、名前は恥ずかしさのあまり慌てて きびすを返す。
彼が正視した事など、今まで何回あっただろうか。
「なんてね、私の気のせい――」
言い終わらないうちに、スネイプは素早く立ち上がり、少女を後ろから抱き締めた。
リリーと同じ赤い髪、すらりと伸びた長い手足に我慢できずに。



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