リリーそっくりの後ろ姿から目が離せない。
あれは違う、別人だ。違う違う違う違う、違う。
どんなにどんなに言い聞かせても、せわしなく胸が騒ぐのは、リリーを思い出にできないから。

たっぷりとした赤い髪の女子生徒を、スネイプは密やかに目で追っていた。
名前の後ろ姿が大好きだ。
なのに振り向けばいつも失望する、名前の濃い青色の眼。
端正な顔立ちをしていても、深緑の眼でなければ意味がない。
少女の好意に気づいていながら、黒衣の男は素知らぬふうを装っている。
それは、いつも。


片影



ホラス・E・F・スラグホーンが魔法薬学教授に就任した1996年、ハリーやジニーと同様、さっそくお気に入りの1人となったのが名前・名字。
今年から7年生、マグル生まれで学年トップ、レイブンクローが誇る優等生だ。
スラグホーンはダンブルドアの同窓生で、人物蒐集癖のある、太った丸顔の禿げた教授。お眼鏡に叶った一廉の人物は、もれなく彼の写真集に加えられる。
ドレッサーの上に飾られた魔法使いや魔女たちの写真を、名前は しげしげ眺めていた。

「グウェノグ・ジョーンズはホリヘッド・ハーピーズのキャプテン。バーナバス・カッフは知っとるだろう、日刊予言者新聞の編集長だ。そして手前の写真はアンブロシウス・フルームだが――」
スラグホーンは卒業生の写真を詳しい解説つきで見せてくれた。
ふと、名前は1枚の写真に目を奪われる。
数人の生徒の中心にいる、きれいな赤い髪の女子生徒。
その眼に見覚えがあった。

「スラグホーン先生、この人は」
「ああ、それは……リリーだよ。リリー・エバンズ。君の1つ下の学年にいる、有名なハリー・ポッターの母親だ」
セイウチ髭を撫でながらスラグホーンは呟いた。
淡いスグリ色の眼を細め、歌うようにリリー・エバンズと発音する。

「ハリーの死んだお母さん……」
クシャクシャの黒髪に緑の眼。名前は合点がいった。見覚えがあると思ったのは、彼女の眼がハリーと同じ色と形をしていたからだ。

吸い込まれそうな、濃い、緑。



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