「暑いね」
私はそう言ってセブルスを見る。彼は「全くだ」と言って、眉間のしわを一層深く刻み込んだ。
今年の夏はめずらしく猛暑だった。その上、いつもは曇りの空まで、青色をたたえて広がっている。私は灯りのない教室の窓から、切り取られた空を見上げた。
「それにしてもさわやかな青空」
「フン、いまいましい」
「セブルスは暑いのが苦手だね」
クスクスわらって言ってやる。彼はむっとして、顔を更にしかめた。
「そういう名前は」
「私は好きだな」
夏は好きだ。暑いのも苦手じゃない。汗をかいても、その後にシャワーを浴びるのが気持ちいい。
「どうかしてる」
私のいらえを聞くと、首を振って呆れたように言った。そして観念したように羽織っていたローブを脱ぎ捨てる。白いシャツになったセブルスは、少しはましになったと言って、机にうつぶせた。
「それでも、イギリスの夏は過ごしやすいと思うけど」
「そうかもな。ボーバトンなんかじゃなくて良かった」
「あっちの夏は暑いだろうね」
フランスにある魔法学校。考えただけでめまいがする、というような顔でセブルスはうなった。私はまたわらう。
「う」
すると、セブルスがいきなり顔をおさえた。
「どうしたの」
「目に…汗が入った」
だから嫌だ夏は、とかぶつぶつ言うセブルスに近寄って、見せて、と顔を上げる。黒い髪が汗にぬれて、カーテンのようになっていた。指でよけると、ぎゅう、と目を瞑る白い顔。
「いたい…」
「ハンカチは?」
「忘れた」
「もう」
ポケットからハンカチを出して、額を拭う。
そのとき、なんとなくセブルスの顔を見ていたら、ささくれた唇に目が行った。
「……」
つい、顔を、寄せる。
「ん」
ぱち、とセブルスの目が開いた。
「な…なにしてる」
「あ、ごめん。つい」
「つい!?」
ついで舐めるやつがあるか!セブルスがおもしろいほど赤くなって叫ぶので、私はわらって、言う。
「だって一生懸命に目を瞑るから」
「痛かったからだ!」
「目は大丈夫?」
「いた…いや、ああもう」
わからくなった、といって、セブルスは疲れたように机に伸びてしまった。
「ああ、それにほら」
「なんだ」
「暑いから」


どうにかなっちゃったみたいよ


相変わらず青い空が広がっている。
イギリスの日差しは槍のように強く、差し込む。




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