こんなに空は青いのに。こんなに濁りもなく広がっているのに。数分前、2年も片思いしていた相手にばっさりと、そりゃもう気持ちいいくらいばっさりと振られた私の心は、洪水がおこりそうなほどの大雨だった。あれ、外、雨降ってたっけって錯覚を覚えるほどの大雨。


「失礼」
「…え、」


その言葉があなたと初めて交わした言葉で。その言葉の後、私が座っている中庭のベンチにこれ以上ない上品さで腰掛けた。それからこれ以上ない優雅さで、手に持っていた分厚い本を読みはじめた。…加えて、これ以上ない綺麗な顔で。


この綺麗な顔は、ホグワーツでは知らない人はいないというくらい有名な顔だった。…レギュラス・ブラック。


一瞬驚いた私はというと、さっきまで流れ続けていた涙が今更止まるはずもなくいきなり来た彼を無視しながらまた悲しい気持ちにふける。


「…鼻水でてますよ」
「、へ?」
「ひどい顔ですね」


…いきなりなんなんだ、この人は。と思いながら、今この場にはなんだか気まずい空気が流れていて、いてもたってもいられなくなったけど…この人のために消えるのはなんだか癪だった。


「あの、私、泣いてるんです!どこかにいってください!」
「…は?」
「…は、じゃなくて!」


こっちとしてはすごく真面目に言ったつもりなのに、相手は綺麗な顔を1ミリも崩さずに呆れた声色で言い返してきた。


「ここは学校の敷地内です。そしてこのベンチは学校の私物であり、また公共のものです。ああ…公共の意味分かります?公共っていうのは、」
「、分かります!」
「分かるんだったらそんなこと聞かないでください」


そう言い放った相手はまた優雅に分厚い本を読みはじめた。言い返されたことにまたつらくなって、涙が溢れ出てくる。泣いたって何も解決しないのに。


「…何でもっと泣いてるんですか」
「だ、だって…つらいん、だもん」
「ああ、もう。また鼻水でてますよ」


留まることを知らないらしい鼻水が涙を流す度に、落ちてくる。もう恥ずかしさもなにもなくて、彼がポケットから出したハンカチに大人しく鼻水を拭かれていた。


「…すみません」
「まったく…。これ以上泣かないでください。気が散る」
「、本当に申し訳ありません」


だいぶ落ち着いてきた涙腺と鼻水。そして私は彼に平謝りするしかなかった。散々泣きつづけた結果…彼の高級そうなハンカチをぐっちゃぐちゃにしてしまったから。


「あの、洗って返します…」
「もう要らないです」
「でも、」
「…そろそろ次の授業ですよ、では」
「あ…、あの!ありがとうございました。ちょっとすっきり、しました」


立ち上がったあなたの背中にそう伝える。


「別に…、好きな相手の泣き顔は、見たくないですから」


顔だけこっちを向いて私に放った言葉に、心臓が1つ大きく鳴った。


「え、」
「ちなみに返事は明日まで。イエスしか受け付けません」


そういって彼は颯爽と消えていった。…ほのかに、耳を赤くしながら。


返事は明日まで。さっき一つの恋が終わったのに、また始まりそうなんて。けど明日は二人にっって幸せな日になりそうな、そんな予感がした。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -