その日は、雨でした。傘をさして、夜道を歩いて帰る。歩きなれた道を、あれこれ考えを巡らせながら進んでいく。
たとえば、今日の夕飯は何を食べよう、とか。通販の荷物は届いているだろうか、とか。他愛もないことだった。
だから私はそれに気付かなかった。
道の真ん中に倒れている男の子を。

黒い塊が落ちていると思った。目を凝らして見たら、人間だった。黒いコート?マント?に身を包んだ、黒髪の男の子。うつ伏せで倒れていた。

人間って、慣れない現場に遭遇したら混乱して正常な判断ができなくなるって本当なんだ。慌てて駆け寄り、抱き起す。仰向けにしたら、あらまあ端正な顔立ち。怪我をしている様子はない。気絶しているだけみたいだ。

本当なら救急車を呼ぶとか、警察を呼ぶとか、そういう判断を下すはずなんだけれど、どうしてだか私はそんなこと頭に思いつかなくて、その子を抱きかかえて、すぐ近くにある自分の家まで走った。
服がぬれて風邪引いちゃう。このままじゃダメだ。
分けも分からない思考を張り巡らせて、私は家の鍵を開けて中に転がり込んだ。



20140711
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