「買い物に行きましょう。」
Vくんいわく、生活に必要なものを買いにいかないといけない…だそうだ。確かにその通りだ。でも買い物と言われても、私はこの世界のお金を持ってないわけで。
「Vくん、このお金使える?このカード使える?」
財布から取り出してVくんに見せたら「……見たことがないお金です」と言われてしまった。ですよねー。私のいた世界じゃないなら、このお金はただの紙で、カードに登録されている講座も存在しないわけだよ。
「お金がないと買い物できないでしょ?気持ちは嬉しいんだけどVくんたちの家のお金に手を付けるわけには…なんとか仕事を探すよ。」
へらり、と笑うとVくんは「大丈夫です」と胸を張った。
「トロンがいいと言ったんです。さ、行きましょう。」
お金のことは気にしないでください、と言われ、断ったけどVくんは譲らず、結局私が折れて買い物に行くことにした。

「服と、歯ブラシと、シャンプーリンスに…。」
「Vくん、最低限のものでいいよ?」
「いえ、僕たちの家には女の人がいません。だからユツキさんの分まで買っておかないと。」
「そ、そう…?」
なにやらすごい量の買い物になりそうだ。

Vくんの言いつけどおりに服に歯ブラシにシャンプーリンス、化粧品まで買ってもらった。本当によかったのだろうか…Vくんはカードを使って「一括払いでお願いします」と言ってたけど…。
「気にしないで、僕たちがしたくてしてるんだから。」
「…そ、そう?」
「そうだよ。これからユツキさんは僕たちの家族になるんだから。」
家族、そう言われて顔が赤くなった。
「一つ屋根の下で一緒に暮らすんだから家族も同然、でしょ?」
屈託のないVくんの笑顔に私も笑顔になってしまった。

「早く仕事を見つけてお金返すからね!」
「本当に気にしなくて大丈夫ですよ?」



20120622
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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