※夏木復帰後の話 最近練習から帰ってくると部屋の中でサッカー雑誌が広げられていることが多い その雑誌たちの中心にはいつもなまえがいる 今日も選手名鑑を読みながら視線を一瞬こっちに移して「おかえり」と一言告げた 「ただいま。」 散らばっている雑誌をひとつ拾って読んでみると、各チームのFWについて書いてある特集が目に入った そこにはやっぱり 夏木陽太郎 とナツさんの名前がETUの記事には大きく載っていてこの雑誌もナツさんの復帰を待っていたのかなと思うと現実を突きつけられたみたいで悲しくなった はぁとため息をつき、 雑誌を閉じた ナツさんみたいな勝負強さ、王子みたいなテクニック、杉江さんみたいな身長を生かしたプレー みんなプロになるに相応しいものを持っている …俺はどこがプロのサッカー選手らしいんだろう どこが飛び抜けていてプロになれたんだろう 「恭平くん、また考え事?」 「い、いやっ!なんて言うか…」 「最近多いよー。見てれば分かるんだからねっ」 「あはは、はー…」 力なく笑う俺の顔を見てなまえは何か言いたそうだった気がしたけどまた雑誌に視線を戻した 「サッカー雑誌って女の子が読んで楽しいの?」 「うん楽しいよー、ETUのページばっかり見ちゃうけどね。彼氏がスタメンで出てるんだもん。私もチェックしないと。」 「でも俺あんまり載らないよ、ゴール決まったのも少ないし…それに」 言葉が詰まった 俺は何を言ってるんだろう 「…それに?」 「それに、ナツさんが戻ってきたら多分ナツさんがスタメンになる…」 言葉が止まらなかった ネガティブなことを言っている自分が嫌になったけど、抑えることも出来なかった 「んー、監督さんにそう言われたの?それともコーチ?先輩?」 「いや、誰にも言われてないけど、」 「じゃあ、次節から夏木さんだけがスタメンだなんて決まってないじゃない。」 「でもナツさんは去年チームで一番得点を上げたし」 「確かに夏木さんは素人の私から見てもすごい選手だと思う、」 なまえは当たり前のことを言ったナツさんをすごい選手だと 「…でも怪我した夏木さんの穴埋めとして監督は今まで恭平くんを使ってきたわけじゃないと思う、サッカーやったこともない素人がこんなこと言っても恭平くんは何とも思わないかもしれないけどさ。」 なまえは自信なく笑って俺の手を握った 「恭平くんにしか出来ないこと、きっとあるよ。夏木さんにも堺さんにも出来ないこと。それをみんなやってほしいと思ってるんじゃないかな。」 「俺にしか出来ないこと?」 「それはサッカー出来ない私からは説明できないけどね。でもみんな恭平くんに期待していることは一緒だと思うよ。」 君にしか出来ないこと 俺はあの時なまえが言ったことを思い出しながら次の試合に向かった ---------- 単行本で大阪戦読み返してたときに思い浮かんだものです。 あそこらへんは泣きそうになります。大好きです。 0805*那智 |