03



何度も口付けを交わしながら、今回は触れるつもりのなかった其処へと、そうっと指先を伸ばす。その人の口端から溢れ出た唾液に濡らしたそれで窄みを解しながら、息を潜めるクラトスに大丈夫だと声をかけた。
理性などとうに役立っていないだろう中。求めてくれていることをそのままに受け入れていいのか、未だに迷いはあるけれど
それを誤魔化すように口付けるその度、しつこいと感じても当然のそれに、その人はまるで安堵しているかのように薄っすらと笑みを浮かべてみせるから。
「リ、オ…ン…」
苦しければ苦しいほど、それを背負い込みがちになるこの人が今、僕を求めてくれている。それはきっと特別なことで―――その身を、任せてくれているということなのかもしれないと。……そう思うのは、ただの自惚れなんだろうか。

進入させた指を奥にまで入り込ませ、窮屈な其処を内側から解す。微かな刺激にも身体中を震わせるその人は、二本目の指を受け入れたのと同時に絶頂を迎えてしまい、シーツにぐったりと沈みこんでいた。既に息も絶え絶えの様子で、ぜえ、と喉を鳴らすような呼吸を繰り返している。
大丈夫か、と―――問いかけようとした言葉を、寸前で呑み込んだ。片手を熱いその頬へと遣り、そっと撫ぜる。名を呼びながら、止めてしまっていた指で再び奥をなぞった。
「あ……っ」
目を閉じ、がちりと硬直したクラトスが、自らの手をそろそろと動かしていることに気付く。内部を掻き広げ、それの行き先を半ばぼんやりと眺めていた。それは、皴だらけのシーツを幾度もきつく握りこみながら、緩慢に上を目指す。何かを探し求めているかのようだ。やがてその手は頬に触れたままの僕の手の甲に重なり、其処に落ち着く。それをそのまま握り締めると、ふいにその人の瞼が開かれた。
きれいな色の瞳が、僕を見上げる。
「…り…お、……も、っ……早 く」
急かすような言葉に首を振る。まだ解しきれていないのだと答えれば、どうしてかその人はひどく悲しげな顔をした。
それに思わず困惑してしまう僕の手を、小刻みに震える手のひらが握り返してくる。
「熱 い……リオン、」
はやく。
強張るような声と、潤んだ瞳の奥底に見え隠れする欲の色に、喉を鳴らす。
この人を求める自分を、…最早抑え留めることなんて出来なくて。

指を引き抜き、其処へ自身を押し当てる。それに怖がるクラトスを宥め、落ち着かせてから、先を一気に沈み込ませた。
絡みつくような中はくらくらとするほどに熱く、狭い。
「あァッ…あ…!」
「っ……!」
締め上げてくるそれに息を詰め、達してしまいそうな衝動に耐える。びくりと背筋を反らせるその人の自身は先走りの透明に濡れ、張り詰めていた。奥へと進入させるのを一旦止めて、屈みこむようにしてその人の耳元へと口を寄せる。
「堪えなくていいから…」
鳶色の髪に隠されているそれへ囁いて
中ほどまで入り込んでいたのを、ぐ、と奥へと突き入れた。
「あああ!」
跳ね上がり、痙攣する身体。それと同時に、中のものをきつく締め付けられる。奥歯を強く噛みしめ、快楽をどうにかやり過ごしながら、悲鳴じみた声と共に熱を吐き出すクラトスを抱き締める。ひどく色っぽい表情に煽られながら、奥へ入れてそのままのものを動かした。
「ひ……!」
つう、と伝い落ちていく涙を舐め取り、縋り付いてくれる腕のその強さに息を吐く。汗ばんだ額に口付け、"好き"をちいさく呟いた。


「ふァ…あ、は…っ ああァ……」
掠れきった声。ゆるゆると首を横に振り、なかなか治まりきらない熱に怖がるクラトスに、大丈夫だと語りかけ続ける。せり上がる熱を吐き出し、律動を止め、口付けを交わして―――また、熱を吐くために高みへと。その繰り返しの中で、この人は何度、僕の名を呼んでくれただろう。
「っ…クラトス…」
大したことなど何も出来はしない。情けないだけの僕の名を、それでも呼んで、求めてくれる。
これから。この人の為に、何が出来る。
「ぁ… う……」
肩で息をつきながら、瞼をひどく重たそうに下ろし、ふとした拍子に開く。そんな動作を繰り返すようになったその人を目に、出来る限り刺激を与えないように自身を引き抜き、そのままそっと抱き寄せる。息を潜めたクラトスは、けれどそれ以上を身体に灯してしまうことはなく、暫くは緩慢に瞼を開閉させていた。





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