七月十日までのお礼文まとめ(ユリクラ/ジェイクラ/コレクラ)



(ユリクラ)

ソファの上、こうして隣に座っていると、それは時々視野に入り込んでくる。
ぴっちりしてるんだかそうでもないんだか何とも微妙な衣服の、……そのわき腹部分。
二つのベルトで固定されている腰よりちょいと上。
引き締ってんなあ。
いつもならそう思うだけで、後は他の事に思考が向いたりすんだけど
今日は何故だか、妙なぐらいに気になって仕方がなかった。
だから、右手で拳を作って、人差し指だけ立てて。
「…ッ!?」
わき腹のあたりを、ツンと軽く突っついてみたりした。

息を呑み、身を捩じらせたそいつのその反応が面白くて、遠ざけられる体を追っかけながらツンツンと突っつく。
そいつ的にこれはとてもくすぐったいものらしい。懸命に逃げようとしてる。
そのワリにはソファから立ち上がったり、この場を去ろうとしたりとか、そういうことをするような感じはまるでなくて
面白ェなあと、笑っちまったのが駄目だったのか。
「…何をするのだ」
近づけた指ごと、がしっと掴まれて
恨みがましい目できつく睨み上げられることになった。
「いや。何か面白かったから」
「私は面白くなどないのだが」
「そうか? …でも」
そいつが会話に集中して、せっかくの防衛を疎かにさせている隙。
指ごと掴んだ手のひらをするりと逃げ出して、再びわき腹へと狙いを定める。
そこを突いて、もうこの際だと指全体でくすぐってみれば。
「くっ、……ははっ…」
滅多に聞くことの出来ない笑い声が、ほんの僅かに上がった。


調子付いてからかいすぎたかと思った時には既に遅く、黙り込んだクラトスはソファの片隅でそっぽを向いていた。
話しかけてみても応答はなし。どうやら機嫌を損ねたらしい。
まあ、こんな子どもっぽいトコロも滅多にお目にかかれないものだし、そういう場面を見せてくれるのは、信用されてるみたいで嬉しいからいいけど
……どう機嫌を取るかな、と。それだけは悩みどころだ。
考え込んでても思いつかなきゃどうしようもないかと、もう一度声を掛けようと思った。
―――それと、ほぼ同時。
「ッ!?」
自分、の、わき腹あたり。何かが触れて
くすぐったいようなそうでもないような、その何とも言えねえ感覚に息を呑んだ。
遠ざかり、慌ててクラトスの顔を見てみると
"してやったり"………とでも言ってそうな幼いものにさえ見えてくる、笑み。
そんな表情にどきりとして

………ああ、はいはい。俺の負けだよ。

………………………………

(ジェイクラ)

自分でも、なかなかに良い趣味をしていると思うが
何しろからかえばからかうほどに面白い反応を返してくるものだから、止められない。
時にそれが過ぎて機嫌を損ねてしまうこともあるのだが、それだってお人好しのその人は結局許してくれてしまうし。
「…ジェ、イド…?」
ついついからかってしまいたくなる。
長い前髪に隠れたその顔を凝視しながら、零れてしまいそうな笑みを必死に押さえ付けた。

自室。四角い空間のその中には、私と彼の二人しか存在しない。
いつもならもう少し賑やかなのだが、今は皆が出払っている。なんとも都合の良いことに。
誰も居ないから、暇であればお茶でも如何ですかと。自ら招きいれたその人を
口を硬く閉ざしたまま、ひたすらに見つめ続ける。
どうしたのだ、という問い掛けにも応じず、後退りしたその人を追いかけるようにして歩を進めると
その人は普段の冷静さを崩しわたわたとし出して、私の名を呼びながらまた後ずさりをした。
離れようとするから、近づく。そんなことをしている内に、その人の背は背後の壁にどさっとぶつかった。
もうこれ以上後ろへ下がることが出来ないことを知ったらしいクラトスが、それでもなお追い詰め続ける私の両肩を掴み
どうしたというのだ、と。先程よりも強く、そして何処か不安げに問い掛けてくる。
「どうもしていませんよ」
応じつつ、上からその顔をじいっと見つめる。そのまま片手を伸ばし、顔のほぼ半分を覆う前髪を退けた。
幼めな顔立ちと、窺うような瞳。
いつ見ても、随分と歳相応でなく、端麗だ。
「特別ですから。見ていたいんです」
「………からかっているのか」
「いいえ? 本心ですよ」
その言葉自体は否定しませんけど。
今の自分の発言に偽りはないというのもまた、事実。

………………………………

(コレクラ)

ひらひらと揺れる。
とても不思議な形をしたマントの先が、彼が動く度に揺れている。
行く場もない両手を自分の後ろで繋ぎながら、ぼうっとその姿を追いかけようとするのは
……なんでなんだろう。
ロイドとの一戦の後で戻ってきてくれたらしいクラトスさんは、みんなの前ではいつも通りを上手に装っていて、
それでも、ある時にふと。例えば、今みたいに休憩中で、自由に行動できるときとか。
こっそりとみんなから離れて、ひとりで。とても疲れたようにしている。
木陰の中。木にもたれかかったクラトスさんはとてもぼんやりとしていて、私がここにいることさえ気付いていないみたいだった。
だから、声を掛けようと思って。でも、胸の奥がどきどきとうるさくて、それだから何も言えずにいた。
どうしてこんなに緊張するんだろう。
「………どうしたのだ?」
「あ……、えっと」
迷ってわたわたとしていたのがきっと悪い。さすがに気付かれてしまったみたいで、私へと言葉が向けられる。
どうもしてはいないけれど、それをどう言おう。なんでもないです。なんて。それだけじゃ、何となくだけれど足りない。
「えっと……その。………お隣、いいですか?」
「……? ああ……」
特別な理由なんて、なんにもなくっても
許されるなら、……傍にいたい。
今すぐにでも固まってしまいそうな両足を一生懸命に動かして、ちいさく首を傾げているクラトスさんに近寄った。
彼のその隣にそうっと座る。
ふんわりと届いてくる香りに心の音がもっと大きく早くなった気がした。それが、隣にいるクラトスさんにまで聞こえてしまいそうに思えて、息が詰まる。
聞こえてしまわないようにと、立てた両膝を抱え込んだ。
「………」
クラトスさんは、何も言わない。
気を遣ってくれているのかもしれないと、そう思った。
傍に居れる。傍に居させてくれる。たったそれだけで
こんなにあたたかい気持ちになれる、これはきっと素敵なこと。


みんなと一緒になって先へ進む、その中でさえも
ちょっとした不安に足が固くなっていって、少しずつ少しずつ、みんなより遅くなってしまう。
……それでも。
「…どうした」
こっそりと、気付いてくれて。やんわり手を差し伸べてくれる。
些細なやさしさに、胸がいっぱいになるの。



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