つれづれ | ナノ

08/08(Mon):むうーとしつつ、そんな短編


―――何故だろう、と考える。
今日は何故だかゼロスの機嫌が悪い。
確証があるわけではなく、私に対し、そのような言動を見せたわけでもないのだが、唯、何と言うか。
まとっている雰囲気がやけにぴりぴりとしているのだ。

どうしたのか、といっそ訊ねたい。が、機嫌を損ねている本人にとってその問い掛けは案外、気に障るものだ。
其れを知っている。だからこそ、訊くことすら出来ずにいる。

長らく考え込んだ挙句に考え付いたのは随分と子供じみたものだった。その自覚がある。更に言うならば、それを行動にうつすことによって、ゼロスの気分はどうなるのだろう。
なおさら気分が悪くなってしまうだろうか。そんな不安もある。
ただ、自分なりに精一杯に考えたつもりだった。メロンを買う、なども考えはしたものの、言い出しづらく。
だから。
「………ゼロス」
「んー? なに?」
ソファに座し、やはり何処と無く険しい顔をしているゼロスへと近寄る。その目前に立ち、彼が今なにも持っていないことをそれとなく確認をして。
「…どしたの天使さ、―――!?」
息を詰まらせてしまいながらも、彼へと抱きついてみたり、した。

この発想に至った経緯は、普段のゼロスならばこれで随分と嬉しそうな顔をしてくれるから、というたったそれだけのことだった。
自分で私を抱き寄せるのと、私が自分で抱きつくのと、それは大きな違いである。というのはゼロスが何時だかに口にしていたと思う、言葉。
どちらも嬉しいけれど、後者はそれのレベルが違うのだとか、なんとか。
その時の私は、それを理解が出来ぬと呟くだけで終わらせてしまったが、今にして思えば―――それも、少しばかり解るような、気が。
「あー……アンタってホント、ずるいわ。何がずるいって、鈍っちいくせにこんな時だけヘンに鋭かったりとか、こんな時だけいつもしてくれないコト平気な顔でしたりとか」
「………私は怒られているのか?」
「いーや全然。全部褒め言葉よー?」
苦しいほどに抱きしめられながら、捲くし立てるようなゼロスの早い言葉に首を傾げる。
私の問い掛けに呆れた様子で応えるゼロスには、わざとらしく無い、思わずどきりとしてしまうような笑みの表情があった。
安堵する。その背へ、腕を回した。


―――――――――――――
不機嫌もその可愛らしさに吹き飛ぶ!



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