- 深愛 - 白雲の章
この作品集で、唯一の第一部(学生編)におけるシルメルです。
第二部、戦争編のシルメルもとても好きですが、学生だった頃のシルメルも好きなので、こうして書けてよかったです。
6作の収録作品の中で、一番最初に書いたお話です。
収録順に書いたんじゃないの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、わたしの場合は、そうでは無いことの方が多いです。
どちらかが記憶を失くすシルメルのお話をいつか書きたいなあと前々から思っていました。
一番大切に想っている人物の記憶を失う、というのは失った方も、失われた方もすごく辛いよなあ……と思いつつ書きました。
だけど、記憶を取り戻すことで更に絆を深める、そんなお話にしたかったのですが如何でしょうか。
この作品のタイトルは、出来る限りシンプルなものにしたかったので、こんな感じになりました。
- コル・レオニスへ誓う - 蒼月の章
コル・レオニスというのはラテン語で「獅子の心臓」という意味があり、また、しし座のα星「レグルス」のことでもあります。
シルヴァンとメルセデスが本来所属するのが「青獅子の学級」なので、「獅子」に因んだタイトルにしたいなあと思い、いろいろと調べて、このタイトルにしました。
シルヴァンもメルセデスも青い獅子の旗のもとに集い、ディミトリたちと勇敢に戦い抜いた、そんなイメージから来ています。
シルメルは、両者とも自分より相手が傷付くことを恐れ、守りたいと願う気持ちがとても強い組み合わせだとわたしは思っています。
そこからいろいろと膨らませた感じです。
- 蒼白のリベルタス - 紅花の章
リベルタスとはラテン語で「自由」の意味。そして、わし座ξ星の主星の名前でもあります。
「コル・レオニスへ誓う」と並行して書いていた作品です。
そちらが蒼月の章におけるシルメルだったので、こちらは紅花の章のシルメルです。
彼らが「黒鷲の学級」に移ったあとのお話でしたから、タイトルにも「鷲」に関連するワードを入れたかったのです。
なんとなくではありますが「コル・レオニスへ誓う」と対にしているイメージです。
この作品の中でも書いていて、特に辛かったお話です。
幸せなシルメル本にしようと思っていたのにこれを書いたことでコンセプトが揺らいでしまいましたが、プレイヤーの決断やスカウト状況によって、いろいろな衝突が生まれるのが風花雪月。それを書きたかった。
最初は普通にメルセデス(&シルヴァン)の視点で書こうかなと思っていたのですが、ちょっと変則的に、ファーガス軍に所属するイングリットとアネットの視点で、前半部分を書きました。
イングリットもアネットも、確かにメルセデスのかけがえのない友人でしたが、道を違えてしまったことでこの作品では悲しい結末を迎えます。
そして、終盤はシルヴァン視点です。メルセデス視点は敢えて入れませんでした(代わりと言ってはなんですが「アウローラは泣かない」が全部彼女の視点で書いたお話です)。
「蒼色のイヤリングが月のように淡く輝く」という描写が少し気に入っています。
この作品に於けるメルセデスとシルヴァンが辿ることの無かった、「蒼月」の章と重ねています。
- Crimson Glory - 紅花の章/ソロエンド後
メルセデスのソロエンドは紅花ルートか、それ以外のルートかで内容が変わります。
紅花の章だと母親と一緒に旧ファーガスで孤児院を開き、それ以外だと家を飛び出してガルグ=マクの修道女になります。どちらも慈悲深い彼女らしい未来を辿りますよね。
今回、紅花のソロエンドを入れるかどうかは、ちょっと悩んでいたこともあり、このお話を考えたのは、表題作「世界が終わるその時もあなたと共に在りたくて」を書く直前でした。
Crimson Glory(クリムゾン・グローリー)というタイトルは、赤い薔薇の品種から取りました。この作品は「紅花」の章のお話なので。
クリムゾン・グローリーは香りが強く、とても美しいビロード調の深紅色をした薔薇です。
しかし、なんとなくのイメージと、言葉の響きで付けたので、そんなに深い意味は無いです。
でも赤い薔薇には「情熱」とか「愛」といった有名な花言葉があり、それが愛を貫いたシルメルにぴったりだなとも思います。
シルヴァン、メルセデス、そしてアネットの3人が「青獅子の学級」からスカウトを受け「黒鷲の学級」に移っている設定のお話ですが、「金鹿の学級」からも誰かがスカウトされたことになっています。
誰がスカウトされたかは決めていたのですが、お話自体には出せなかったので、伏せておきます。本当は出したかったです。
細かい部分になりますが最後に出てくるのが「蕾」なのは、これから咲く=未来があるイメージでした。
ページ数の都合上、これ以上長く出来なかったので、最後の方が駆け足になってしまいました。
そこがちょっと残念です。もう少しふたりの子どもの描写を入れたかったな。今後の課題にします。
- アウローラは泣かない - 蒼月の章/ソロエンド後
タイトルの「アウローラ」は「夜明け」のこと。また、ローマ神話に於ける「曙の女神」の名前でもあります。
当作品集で唯一、タイトルが先にあった作品です。
そして、これを表題にしようかなぁ、と考えたりもしていました。
この作品に登場するオリジナルの少女「レイチェル」の名前は、メルセデスの弟「エミール(イエリッツァ)」の名前の由来だと思われる「エミール・イェリネック」の妻「レイチェル」から付けました。
勿論、これもシルヴァンとメルセデスのお話なのですが、この作品ではメルセデスの弟エミールについて、少しだけですが触れています。
紅花の章を描いた前作「わたしたちのおわり」でもこの姉弟のことを拾えずにいたので……。
メルセデスから告白するお話が書きたかったので書けてよかったなあと思います。
- 世界が終わるその時もあなたと共に在りたくて - 蒼月の章/ペアエンド後
当作品集の表題作です。
終わり方だけは最初から決まっていて、タイトルはそこからつけました。
今回の本は長いタイトル(当社比)にしたいな〜と思っていて、結構悩みながらつけました。
もう少しいろいろ掘り下げて書けたのではないか……と思う部分もありますが、幸せなふたりを描くことが出来たのは良かったです。
また、この作品で特に書きたかったのが、シルヴァン&メルセデスと再会したイングリットの台詞です。
イングリットはシルヴァン(とディミトリ&フェリクス)の幼馴染で、彼の過去を見てきた人物です。
なので、シルヴァンが女性を口説いてまわったりしているのを、間近で彼女は見ていました。でもそれは心の傷を隠すために、シルヴァンが軽い男のように振る舞っていただけなのだとわたしは考えています。
そんなシルヴァンがひとりの女性を愛することが出来た。それはきっと、幼馴染たちからしても喜ばしいことであり、シルヴァンがひとつの壁をこえることが出来たからこそなのだと思います。
だから彼は「(メルセデスを泣かせないと)女神に誓ってもいい」とまで言いました。
わたしはシルメルを周囲の視点から見るお話も好きなので、いつかこのあたりを書きたいなーと思っていました。書けてよかったです!
- そのほか
今回は、FE風花雪月で活動していらっしゃる、カンベりのさんのスペースでこの本を置かせていただきました。感謝です!
不慣れな点もあり、ご迷惑をかけてしまったかもしれませんが、とてもいい経験になりました、本当にありがとうございます!
コミケでこの本をお手に取ってくださった方、BOOTHにてご購入してくださった方にも本当に感謝しています。
また、表紙は割とシンプルめに、でも裏表紙に絵を入れる、という感じにしました。
裏表紙の方に絵を入れるのは別の本でやったことがあるのですが、その際にちょっとした反応を頂けたので、再びやってみました。
今後もシルメルの本を出していきたいと思っていますので、よろしければまたお付き合いください。ここまで読んでくださりありがとうございました!
L'oiseau Bleu / Hitaki.Tsukisaki