感性は人それぞれ


『きゃっ!!!』
「うわっ!!!」

忍術学園に響く二つの声。
火器を持つ少年と本を大量に抱える少女。
「す、すまない!!」

少年--田村三木ヱ門は自分より被害の大きいであろう少女--服部光を見てすぐに謝った。

二人は丁度曲がり角でぶつかった。
三木ヱ門は光に謝った次の瞬間にはぶつかった衝撃でとばされた愛人に駆け寄る。

「大丈夫かゆりこ!?どこかに怪我をしてないか!?」

それをみた光は呆然とする。
そして、ごめんなさい!と謝ると本をかき集めてその場を立ち去った。





「どうしたの光。」

忍たまのなかでは比較的仲の良い綾部喜八郎に尋ねる光。
脳裏には先日の三木ヱ門が浮かんでいた。
『どうしよう……私、田村君の恋人を傷つけちゃった!!!』
「は?」
『ゆりこさんを田村君は大事にしてたのに…蹴っちゃったの!』

喜八郎は目を細めて光を見た。
自分の友人はこんなにも物事を変に捉えてしまう人物だったろうか。

喜八郎は光にいきさつを話すように促した。
「…つまり火器を蹴ったんだ。」
『喜八郎!火器じゃないのよ、ゆりこさんよ!!』
「まあ、ゆりこ…が心配なわけ??」
『当たり前よ!どうしよう!!私、田村君には謝ったけどゆりこさんには何一つ言わずに逃げちゃった…。』
「いや別にいいでしょ。」
『駄目よ!!』

長屋の廊下に座って話し込んでいた二人に近寄る二つの影。
噂をすればなんとやら。

「ゆりこーいい天気だなあ。」
<……………………>

喜八郎は眉をしかめた。
厄介だな。

『田村君…!!ゆりこさん…!!』

喜八郎はハッとしたがその行動をとめる前に光は二人(そのうち一人無機物)に向かって行っていた。

『こんにちは田村君!!』

三木ヱ門は光の顔を見て思い出すように、ああ!!と答えた。
しかし次の瞬間三木ヱ門は瞠目した。

「ゆりこさん…ごめんなさい!!」

急に光がゆりこの前で土下座をしだしたのだ。
喜八郎はいたたまれなさに顔をそらす。

「私、田村君とゆりこさんの逢い引きを邪魔しちゃって、挙げ句の果てには暴力を奮っちゃって!!」

本当に、ごめんなさい!!
再度呟かれた言葉に三木ヱ門は頬を綻ばせた。

「まさかゆりこのことを気にしてくれていたなんてね。ゆりこもそんなこともう気にしていないよ。」
<……………………………>
『本当に……??』
「だからさ、今度三人で裏々山にいこう。ゆりこも君に自分のことを教えたいだろうし!!」
『いいの!?ゆりこさんよろしくね!!』


喜八郎は廊下の先で繰り広げられている、ウフフアハハな展開を見て溜め息を吐いた。
「…あの二人どうしようもないなあ、ね?…踏子ちゃん。」



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