憧れから


私には憧れの人物がいる。

それは火薬庫で在庫の点検をしていたある日のことだ。

火薬委員会に入ったばかりの私に久々知くんが丁寧に教えてくれていた。

そこにある生徒が入ってきたのだ。


「久々知、いつものように火薬をお願いする。」


私は目を奪われた。

凛々しい目に整った顔立ち、一際目についたのは絹のように滑らかな髪だ。

「立花先輩、分かりました。」

久々知くんが奥へ消えたのを良いことに、私はタカ丸くんの方へと寄った。

『…タカ丸くん、あの立花先輩って人、髪の毛が物凄く綺麗。』

「立花くんでしょ?凄いよねー、僕も最初見て驚いちゃった。」

ありがとう、と呟き去っていく後ろ姿をいつまでも見つめていた。



そして今日、私は決心した。

『今日こそ立花先輩と話をする!』

「…私が何だって?」

うひゃあと変な叫びをあげながら振り返ると、憧れ人の立花先輩。

聞かれてた…と顔が真っ赤になる。

『たた立花先輩っ!』

「何だ?」

首を傾げるその動作一つ一つに美しい髪の毛が連動する。
『大好きです!!』

「…え?」

私は続ける。

『その髪の毛…大好きです!!!』

「……髪?」

立花先輩が俯く。

「私の髪がそんなに好きか…?」

『はい!私、綺麗な髪の毛を見るのが大好きなんです!』

立花先輩は顔をパッとあげ、私の髪を梳く。

「そうか、お前の髪も綺麗だと思うぞ?」

こんなことを男性にされるなんて、初めてだ。

顔がさらに火照るのがわかる。

「もっと綺麗な髪を見たいか?」

『え…?み、見たいです!!』

そうか…と立花先輩は頷く。


そして、あろうことか私の髪を掬い、それに口付けをした。

『ひ………。』

声にならない悲鳴をあげる。

「お前と私が夫婦になれば、もっと素晴らしい髪を見ることが出来るが…?」



私は頭が真っ白になる。
問いに答えられるハズもなかった。







微妙な終わり…



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