退屈すぎる日常、そりゃ一度しかない人生だし非日常的な事を体験してみたいって気持ちは確かにあったけれど、流石にこれはないよね、神様。
私が学校から帰ってきて家に入ると綺麗な金髪な外人さんが倒れていました。正直私は目を疑いましたよ、ここは私の家なのに何故こんな金髪な外人さんがいるなんてしかもこの人どっかで見たような。
ってか、こういう時はどうするべきなのだろうか110番?119番?てか倒れてるけど外人さん大丈夫なのか?
「あ、あの」
私が思いきって声をかけた瞬間だった外人さんがいきなり起き上がって少し慌てた様子で私を見つめてから「…誰だよ?」と呟いたのだ。
「…あ、貴方こそ誰ですか?ここは私の家ですけど」
私がそう答えると外人さんは「あー!」と何か納得したかのように大きい声を出したので私は思わず目を見開いて外人さんを見つめたら外人さんは先程あんなに慌てた素振りを見せていたのに何故が冷静そうな目付きになった。
「驚かせて悪かった、俺はイギ…アーサー・カークランドだ、どうやらイギリスからここに移動してしまったらしい」
「え?」
「…あ、そのつまり」
私が思わず聞き返すと何故ここにいたか説明し始めてきた。だが話してくれている内容がちっとも理解出来なかった。
彼はアーサー・カークランドという名前でイギリス在住らしいそして彼曰く魔術で移動しようとしたが何やら呪文を間違えてしまった所為で目的地だった友人宅ではなくここにいた、というワケらしい。
「あの…」
私は思わず信じられません、と言いそうになったが真剣な表情で此方を見つめる彼が嘘を吐いているようには見えなかった。
「わかりました」
聞きたいことはたくさんあるが取り敢えず私は彼を、アーサー・カークランドさんが言ってることを信じてみることにした。悪い人には見えないし…まあ言ってることちょっとアレだけど。
「ありがとな、あ…えーと名前は?」
「あ、結城 葉月と言います」
「葉月?」
「え、ええ…」
「すまないが此処がどこなのか教えてくれないか?日本ってことはわかるんだが」
彼はそう言って首を少し傾げて私を見つめてきたので私はここが日本のどこなのかを分かりやすく丁寧に教えようと思い机の本棚から地図帳を持ってくると地図帳を見せながらここが一体日本のどこなのかを説明した。
「――…なんですけど」
不安そうに私が彼を見上げると彼は「Thanks.」と言って微笑みながら私の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
「あの、アーサー・カークランドさん」
「ん…アーサーでいいぜ?」
「あ、はい
…あのどっかで会ったことありましたっけ」
初めて会った気がしないんです、と私が言うと彼はくすくすと笑いながら私の髪を触れば「…それは口説いてるつもりか?」と言って顔を近づけてきたので私が慌て首を横に彼は冗談だ、と言って笑った。
「アーサーさん」
「ん?アーサーでいいって言っただろ」
「年上の人を呼び捨てになんか出来ませんよ」
「そうか…あ、今は何時かわかるか?」
「えっと、」
私は時間を確認しようと制服のスカートのポケットから携帯を取り出した、画面に表示された時間は18時7分。私が時間を伝えると彼は少し困った表情を浮かべた。
「アーサーさん?」
「あ、悪ィ…もうそんな時間なのか」
「もしかして行く宛がないんですか?」
「何て言うかその…ここに来たのが突然だったから金が」
「あ、友人の方と連絡は…」
「連絡ついたとしても俺を迎えに来るのは少なくとも明日になりそうなんだ」
彼はそう言うと眉を少し下げて苦笑いして「今夜は公園か何処かで野宿だな」と呟いた。
「野宿は危険ですよ、だってアーサーさん目立つし、もし警察とかに見つかったら」
「大丈夫、心配すんなよ…あ、こんな会って間もない奴に親切にしてくれて本当感謝してる」
「アーサーさん…」
「今度改めて礼をしに来るからな、…あと悪いが電話貸してくれないか?」
彼がそう言ってきたので私は手に持っていた携帯電話を彼に渡した。彼は携帯電話を受けとると電話をかけ始めた。多分友人の方にかけているのだろう。
私の部屋に突然現れた不思議な彼ともこれでお別れか…なんて私が思っていた瞬間だった。
「…嘘だろ、」
彼はぽつり呟くと画面を見返しては何度も何度も電話をかけ始めた。
「どうかしたんですか?」
「連絡がとれない」
「え?」
「この電話番号は使われておりません、だとよ」
そう言って、その場にしゃがみこんだ彼に何と声をかけたらいいのか、どうやって励ませばいいのかなんて突然のこと過ぎて私には全然わからなかった。