クリスマスの夜に互いの家の近くで展示されているクリスマスツリーを観に行こうと約束したのだけれど彼は乗り気ではなかった。
わざわざ人混みの中で、イルミネーションを観たいという私の気持ちが理解できないようで私が毎日のように必死に頼み続けた結果彼が折れたのだ。
私は久しぶりのデートに心を踊らせながら服を三時間かけて選ぶとまだ少し早いが待ち合わせ場所へと向かった。
待ち合わせ場所はカップルでごった返しており、この寒い中よく集まるなぁと思った。
まあ私も寒い中にわざわざ集まった一人なのだけれど。
私は首に巻いたマフラーに顔を埋めながら空いているベンチを見付けて腰かけた。
彼の事だ。時間ぴったりにくるに違いない。
私は時計に目をやると只今の時刻は6時ぴったり。
約束の時間まで一時間もある。
私は鞄の中からカイロを取り出すと少し冷たくなった手を暖めると彼が来るまで暇な私はまわりのカップルを観察することにした。
よく観察してみると中学の時の先輩が彼女連れて歩いていたり高校の同級生の女子が背の高いイケメンと手を繋いで見つめ合っていたり近所のお姉さんが同年代くらいの男性と仲良さそうに歩いていたりと意外と知り合いが多かった。
そしてどのカップルも皆幸せそうに笑っていた。
私はそんなカップルを見ていたせいだろうか早く彼に会いたくなった。
でもまだ約束の時間までは時間もある。私は心を落ち着かせようとカップル観察をやめて携帯を弄り始めた。
その時だった。不意に呼ばれた私の名前。
私を呼んだその声は紛れもなく彼の声だ。
「めりー…っ、お前何早くから」
「飛雄こそまだ約束の時間じゃ」
「お前に、早く会いたかったんだよ、悪いか」
彼は息を切らせながら話すと私の隣に腰を下ろした。
「あのね私も早く会いたかったんだよ」
私は寒そうな彼の手を握ると彼の目を見つめながらそう呟いた。
いつものはこんな早く来てくれないのに。
「嬉しいよ飛雄」
「…お前が喜んでくれて、よかった」
彼は照れ臭そうに俯いてそう呟いたからなんか可愛くて私は思わず抱き着いた。
普段ならこんなに人がいる場所で抱き着いたりなんか絶対しないけど、今日はまわりの雰囲気のせいもあってか大胆な行動をしてしまう。
「おまっ、いきなり何してんだボゲェ」
「好き、好きだよ飛雄」
「…おい」
「来年も再来年もずっとずっとずーっと一緒にいようね」
私の言葉を聞くと彼は少し黙って抱き返してくれた。私は彼の胸に顔を埋めた。
クリスマスとかそう言うイベント事じゃないとなかなか外でこんなこと出来ない。
「めりーこっち向け」
「えっ」
「いいから早く」
彼から急かされて渋々顔をあげるとそっと口付けされた。
私が驚きと恥ずかしさで顔が熱くなっていくのが分かった。
彼も恥ずかしそうに視線を逸らして私のことを見ようともしなかった。
たまにはこう言うのも良いかもしれない。
私は彼に寄っ掛かると今度は自分から口付けをした。
すると彼は驚いた顔で私を見つめてくるものだから私はつい笑ってしまった。
「メリークリスマス」
本当に来年も彼と過ごせますように。
私は心の中で夜空にそう願った。