「来週の火曜日僕の家に泊まりに来ない?」
終業式の日、彼が突然そんなことを言い出したものだから私は驚いて変な声を出しそうになってしまった。
別に嫌って訳じゃない。寧ろその逆。すごく嬉しい嬉しいのだけれど彼の両親がいない日に彼の家でお泊まりなんて色々と危険だ。
何て言えば良いだろう。
「…来週の火曜日クリスマスでしょ?
めりーそう言うの好きだと思ったんだけど」
「クリスマス…」
イベント大好きな私にとってはその日大好きな人と一緒に過ごせるのはかなり大きい。
気が付いたら私は彼に抱き着いて必ず行くと宣言してしまった。
そんな出来事から数日経ち、今日がその火曜日。
12月25日クリスマスなのだ。
彼は午前中が部活で午後から暇だと言っていたので、
私は午後の二時に彼の家へと向かった。
だけどいざ彼の家の玄関のチャイムを鳴らすのは緊張する。
私が玄関で押す押さないを繰り返しているとガチャリとドアが開いた。
「何してんの」
「何でもない」
私を疑った目で見てくる彼を私は無視をして彼の家へと上がった。
「リビングがいい?それとも、僕の部屋がいい?」
「蛍の部屋がいい」
「そう言うと思った」
彼は呆れたようにそう言うと私を部屋へと案内する。
そう言えば彼の家へ来るのはまだこれで二回目だったりする。
少しドキドキする。緊張をしているからなのか。
「めりー」
「なに?」
「僕飲み物持ってくるから部屋で待ってて」
「うん」
彼は私を部屋に入れてから部屋から出て行った。
私は無駄に多くなってしまった荷物を彼の部屋の床に置かして貰うと何もすることがなくて部屋の真ん中で突っ立っていた。
暫くすると彼がお茶を持って戻ってきた。
「何してんの?」
今日何度その言葉を聞いただろう。
私は苦笑いしながら、彼からお茶を受け取った。
彼と他愛もない話をしているといつの間にか時間は過ぎていった。
夕飯どうする?と尋ねてきた彼に対して私は「作ってもいいなら作る」と即答した。
すると彼は馬鹿にした口調で作れるの?何て言うものだから私は少しムキになりつつ「出来るもん」と言って台所へと向かった。
冷蔵庫を見て真っ先に思ったのだが冷蔵庫が空に近い。
何故だ、彼の両親は三日くらい前から旅行に出掛けていているのだがまさか彼は一度も買い物に出掛けてないのか。
「蛍まさか」
「最近はお弁当買って」
「ばーか言ってくれれば作ったのに!」
私はぶつくさと文句を言いながら、
足りない材料を彼に伝えて買ってきて貰うことになった。
よし、彼が足りない材料を買って帰って来るまで私は下準備をしておこう。
下準備を済ませ後は彼が帰ってくるのを待つだけとなったのだが彼はなかなか帰ってこない。
私が心配して電話を掛けようとした瞬間だった。
カチャリと玄関のドアの鍵が開く音がして私は慌てて玄関へと迎えに行った。
「蛍、おかえり」
「ただいま」
右手には買い物袋、左手には彼お気に入りのケーキ屋さんのケーキの箱を持った彼が寒そうに体を震わせた。
「ケーキ買ってきたの?」
「めりーケーキ好きでしょ?」
「もうケーキ好きなのは蛍でしょー」
そんな会話をしながらケーキと買い物に袋を受け取ると台所へ戻って行った。
足りなかった材料を作りかけだった料理へと足した。
それを私の横で見ていた彼が料理できるんだ意外。何て言うものだから私は彼を横目で見つめた。
料理を皿に移してテーブルに並べて食べようかと思った時いきなり彼が私の手をとって無言になるから私はきょとん首傾げた。
「ねえ、どうしたの」
「クリスマスとかそう言うイベント事とか僕は別に好きじゃないけどめりーは好きでしょ、だから」
そう言って彼はいつの間に用意したのか指輪を取り出してそっと私の指に指輪をはめた。
私は驚いて彼を見つめるけど彼は恥ずかしそうに顔を俯いていた。
「蛍、ありがと嬉しい」
「安物だけどね、
ちゃんとした奴は将来買ってあげるから」
彼はぼそりと呟きながら私の髪をそっと撫でた。私は嬉しくて泣きそうになるのをぐっと我慢して小さく頷いた。
「あっ私プレゼント家に忘れた…ごめん明日渡すから」
「別にいいよ」
「え、でも」
「僕はめりーがプレゼントでも構わないけど?」
そう言って彼は笑みを浮かべたのだが何だかとても冗談には聞こえなかったので私が腹をくくったのは言うまでもないだろう。