私の声が届きますように | ナノ


 私が女子バレー部入部して数週間経った。
男子バレー部とは体育館が違うため部活中の飛雄がどうしているか私は知らないがきっと楽しく過ごしていることだろう。

「ほら一年ぼさっとしない」

「は、はい」

 一年生はまずはひたすら基礎練習とボール拾い。
私は眠たい目を擦りながらまだ慣れないボールに悪戦苦闘しているが頑張って取り組んでいる。
一年生は私もいれて今のところ十数人いるけれど毎年厳しい練習が嫌になり退部する人が続出するらしいと言う噂を聞いたので少し不安だ。
だけど私はこの厳しい練習に耐えてみせる。

「…あ、玲子」

「ぎゃっ」

私がパスを失敗して小さく悲鳴をあげると慌てて恵が駆け寄ってきた。
何だか私はいつもいつも一緒に練習をしている恵に迷惑をかけてばっかりで少し気が引ける。
多分一年生の中で恵が一番上手いと思う。
きっと一年生の中で最初にスタメン入りするのは彼女なんだろう。
私はまだミスも多くてスタメン入りなんて夢のまた夢だけどいつかは私も先輩たちのようになりたい。

「玲子?」

「あ、大丈夫大丈夫ごめんね」

「別にいいよ…あ、主将が呼んでるから行こう」

 私は恵に手を引かれて集合をかけている主将がいる場所まで行った。
皆が集まった事を確認すると主将は今度する練習試合について話始めた。
試合には勿論ベンチにすら入れない私だが練習試合と聞いてワクワクしてしまった。
だって先輩たちがバレーやっている姿が見学出来るのだ。こんなに嬉しいことはない。

片付けを済ませてから急いで着替え終えた瞬間にHRが始まる五分前の予鈴が鳴り響き慌てて階段を駆け上がると教室へと向かった。勢いよく教室のドアを開けて中に入り自分の席に着いた。

「練習試合楽しみだね」

私は斜め後ろの席にいる恵にそう話し掛けると彼女は大きく溜め息を吐いた。

「私たちは試合に出れないけどね」

「でも先輩たちが試合してるの観れるんだよ」

「そうだけどやっぱり試合に出たい」

恵はそう言うと机に顔を伏せた。
そりゃ私も試合に出たいけど技術なんかないから当分は無理だろう。

「…特訓しようか」

「いいね、特訓っ」

 私が呟いた言葉に彼女は伏せていた顔を上げて名案だねと目を輝かせた。
こうして私は朝練の前に恵と特訓することに決めた。
それと休み時間にも暇さえあれば練習することにした。目指すは夏休み前までにはスタメン入りすること。
目標は大きくと思いそうすることにしたが私はともかく彼女の方はあっという間にスタメン入りしそうな気がするけれど私だって頑張るんだ。

 家でも柔軟とか筋トレとか今までしなかったようなことをし始めた。
早くバレーボールが上手くなりたい。
そんな気持ちが私を動かした。
継続は力なりって言うんだ。今すぐにとは無理でもきっといつかはコートに立てる日が来るんだと思うと心が踊る。
でも私は心の中で何か物足りない気がした。
部活をやるのは楽しいだけど部活を始めてから飛雄と会話していない気がする。

思い立ったら即行動。
今日は久しぶりに飛雄と帰ろう。飛雄は嫌がるかもしれないが私は飛雄と会話しなきゃ物足りない。
夕方部活が終わり恵に今日は一緒に帰れないと伝えて校門の前で飛雄を待つ。
もう季節は5月、入学して1ヶ月と少し経過した。
そう言えば先月もこうやって飛雄を待ったんだ。
まだ先月は少し肌寒くていたけれどもうそこまでは寒くない。

「あ、飛雄ー!」

「…何で居んだよ、お前」

「最近話してないじゃん私たち、家隣でクラス同じなのに!」

私が不満を口にすると飛雄はギロリと私を睨み付けながら深く溜め息を吐いた。

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