「私、バレー部入ることに決めた」
帰り道を飛雄と歩いている時にそう呟いた。
すると飛雄は驚いたのか立ち止まって私を見つめた。
「お前がバレー?」
「なっ、悪いかな」
「別に悪くはねえけど、意外だな」
飛雄はそう言うと再び歩き出した。
まあ確かに私がバレーをやるのは意外かもしれない。
実際入部を決めた時だって自分自身が驚いたくらいだ。
「今日見学したんだけどね、その時先輩がスパイク練習してるの見てたら凄いなーって
私もあんな風にスパイク決めれたらなぁって思って」
「そうか」
「反応薄いなあ、せっかく理由話したというのに!」
「…お前らしい理由だよなとは思った」
「えっ、私らしい?」
私が飛雄の言葉が理解できず固まっているのに飛雄はすたすたと私を置いて先へ先へと歩いて行くので私は慌てて飛雄を追いかけた。
家に着いて母にバレー部に入ると言ったら驚かれた。
熱でもあるんじゃ…と予想以上に心配されまくった所為で私は逃げるように隣の飛雄の家に逃げ込んだ。
飛雄のお母さんに挨拶をしてから私は飛雄の部屋のドアを勢いよく開けた。
「飛雄ー!」
「なっ、ノックぐらいしろよ」
「別にノックしなくても平気でしょ」
平気じゃねえよ、と飛雄から怒られたが私は気にせずベッドに座っていた飛雄の目の前に立つ。
おお、なんかこれって飛雄のこと見下ろせるし良いかも。
私がニヤつきながら飛雄を見つめていると飛雄がいきなり手を伸ばしてきて勢いよく私の頬を引っ張った。
「いっ」
驚きと痛さで私は間抜けな声をあげると私の頬を引っ張っている飛雄の手を掴み引き剥がそうとするが飛雄の力には敵わない。
だけど私が必死に抵抗すると流石に飛雄も手を離してくれた。
手が離されると私は急に力が抜けたかのようにぺたんと床に座り込んだ。
ああ、これじゃさっきと逆だ。
私が飛雄から見下ろされている。
「…お前変なこと考えてただろ」
「考えてない、よ」
「嘘つけ!バレバレなんだよボゲェ」
幼馴染みだからとかそう言うわけではないけれどいつもいつも私の考えていることなんて飛雄にはお見通しらしい。
飛雄曰く私は顔に出てるらしいのだが私にはそれがよく分からない。
「飛雄が身長高すぎるのが悪い」
私がそう言うと飛雄がギロリと睨んできたので私は口をつぐんだ。
危ない危ない、もう余計なこと言うのはやめよう。
「そういえばお前友達出来たみたいだな」
「あ、うん!」
「…じゃあこれからはそいつと帰れよな」
「え?」
「クラスの奴らから、お前と付き合ってるのかって聞かれて一々否定すんのは面倒なんだよ」
気まずそうにそう言った飛雄の顔が面白くて私はつい吹き出してしまった。
すると飛雄から笑うな!と小突かれたけど笑いは止まらない。
「あは、は、帰りは自然と一緒になるんじゃない」
「あぁ?」
「だって家隣なのに!」
私がそう言うと飛雄は溜め息吐いて私の額にデコピンした。
「お、俺が言いたかったのは
今日みたいに待つのは止めろって」
「はいはい、これからは気を付けるよ」
私がそう言っても飛雄は信じてないのか私を疑うかのような目で見つめてくるので私は立ち上がると勢いよく飛雄のベッドにダイブしてやった。
シーツが皺になるだの、なんだの文句つけられたが私は笑って誤魔化した。