私の声が届きますように | ナノ


 入学式と言う一大イベントが終わり、翌日からは健康診断、学校案内等の行事も済み残るは部活動紹介のみとなった。
体育館一杯に生徒たちは詰められステージの上では上級生が一生懸命に活動内容が読み上げている。
だけど私には少し退屈だ。
部活動をやるのを楽しみにはしていたが昨日飛雄から同じ部活入ろうとか考えるなよと言われたので同じ部活に入部するのは我慢しようと思った。
本当は飛雄の側に居たかったのだけれど。
先生から渡された部活紹介のパンフレットを私は溜め息混じりに見つめた。
特に入りたい部活と言うのもない。
まわりの皆は友達同士でどの部活を見学しようかと相談している。
私は飛雄くらいしか話せる人いないのに飛雄は入学式後から少し冷たい。
もう中学に入学したんだからいい加減に名前で呼ぶのを止めろとこの間怒られた。
私は納得がいかず飛雄にお願いをして、
二人きりの時は名前で呼んでもいいと許しを貰った。
けれどやっぱり寂しい。

「大里さんは、どこ見学行くの?」

「ま、まだ決めてない」

私に話し掛けてくれたのは、同じクラスの女子。確か私の斜め後ろの席の子。

「良かったら一緒にバレー部見学しに行かない?」

「うん、良いけど…えっと」

「ありがとう、あっ私の事は恵でいいよ」

「わ、私の事も玲子でいいよ」

「私さぁ、まだ中学で友達が出来てなかったから玲子が初めての友達だよ」

そう言って彼女は微笑んだ。私より身長高くて可愛いのに意外だなぁ。

「私も恵が初めての友達だよ」

私が彼女と仲良く話していると前に座っていた

「本当に?これからよろしくね」

私が彼女と仲良く話していると前に居た飛雄が私の方を見て
“良かったな”と口を動かした。
私は嬉しくて飛雄を見つめながら小さく頷いた。

 先生たちから移動してもいいと許可が出たので私は彼女に引っ張られるような形で女子バレー部が練習している体育館へと向かった。
けれどまだ誰も来ていなかった。
よくよく考えると一年生から順に移動なのに上級生が来れるはずない。私と彼女は互いに目合わせると苦笑いした。

「そういえば玲子って影山くんと仲良いよね」

「幼馴染みだからね」

「ふーん、てっきり付き合ってるのかと思ったのに」

「あはは」

雑談をしているとぞろぞろと上級生が歩いてくるのが見えて私と彼女は反射的に口をつぐむ。
上級生は私や彼女よりも大きくて私はつい後込みをしてしまう。

「一年生?」

「はいっ!見学させてもらいたいのですが」

上級生から尋ねられて真っ先に答えたのが彼女だった。
私はというと、彼女の一歩後ろで上級生と彼女が会話しているのを眺めることしか出来なかった。

彼女が今日のところは見学で明日からは仮入部すると上級生に話しているのを聞いて、何も決まってなくただ何となく彼女についてきた自分が少し恥ずかしく感じた。

「後ろの子はどうするのかな?」

ふいに上級生から話しかけられ私は驚いて少し肩を震わせた。

「あの、私はとりあえず見学して」



―――――

 見学が終わり恵とは校門の前で別れた。
何故かと言うと私は飛雄と一緒に帰りたかったからだ。
きっと飛雄もまだ帰っていないはずと思ったのだけれど、待っても待っても飛雄は現れない。
先に帰ってしまったのかも。
私が諦めて帰ろうと思った瞬間飛雄を見つけた。

「飛雄!」

「お前っ、学校では名前で」

「あのね、私話したいことがあるの」

 私は飛雄のお説教を聞かず自分の話したいことを優先したら飛雄から軽く叩かれた。
まあ、いい。
帰り道は長いのだからゆっくり話していこう。

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