私の声が届きますように | ナノ


 何日も前から計画を練りに練って楽しみにしていた日がついにやって来た。
今日は飛雄の誕生日を祝おう計画の実行日当日だ。
もうすでに学校は冬休みに入っていて、しかも今日の部活は午前中だけだ。つまり午後からは暇なわけだ。
飛雄へのプレゼントに手作りのお菓子でもあげようと思い私はこの日のために材料を買い込んでいた。
普段料理なんて滅多にしないけれどレシピ本を読みながらだから失敗はしないはずだ。

私は小声で歌を口ずさみながらジャージへと着替えるとカバンを肩に掛け学校へと向かった。


 そう言えば冬休みに入ってからはいつも一人で学校に行ってるような気がする。
練習時間が被らなくなったのもあるけど、飛雄は最近なって前よりも自主練習に励んでいて私とのんきに話をしながら登下校なんてする暇はないのだろう。
少し寂しい気もするが、また学校が始まれば一緒に登下校できるはずだ。


まだ人が少ない体育館へ向かうと軽くアップをとってからいつものように邪魔にならない所で恵と二人だけでいつものように練習をする。
お互いの苦手な所を無くしていこうと頑張っているけれどなかなか簡単には上手くいかない。

「今日は何かイイコトでもあったの?調子良いじゃん」

「まあね」

でも今日に限っては、私もいつもやりやる気満々だ。
いつもは上手くいかないことも今日は上手くいく。
私は緩みそうになる頬を軽くつねると頑張って練習に取り組んだ。


「あざーっした!」

 あっという間に部活が終わると恵から久しぶりに遊ばないかと声を掛けられたがそれを断って私は家へと走った。

家に帰るとお母さんから少しは家の手伝いしなさいと言われたが適当に返事をして台所へと向かった。
今日作るのはカップケーキ。
初心者にも作れるらしいので安心だったはずなのだが何故だろう出来上がったそれは私の予想とは全然違って見えた。

「なんで膨らまないのよ」

どこをどう間違えたのだろうか?私は自分自身に問い掛けるが答えが返るはずもなく。
深く溜め息を吐いてもう一度作り直すはめになった。
ちゃんとしたカップケーキが完成したのは日が沈んだ夕方だった。
不器用な私がわざわざラッピングまでしたんだから受け取らなかったら許さない。
私はコートを着ると頑張ってラッピングしたカップケーキを持って飛雄の家へ向かった。

飛雄はまだ部活から帰ってこないらしいがきっとそろそろ帰ってくるだろう。
私は飛雄の家の前で待たせてもらうことにした。
すると丁度降りだした雪に私は苦笑を浮かべた。
そう言えば天気予報で夕方から明け方にかけて雪が降り積もるって言ってた。

「飛雄こい飛雄こい飛雄こい」

まるで呪文のように名前を呼び続けていると見慣れたジャージが遠くに見えた。
私は精一杯手を振ってみると向こうも気付いたらしく先程より歩くスピードを速めた。

「雪降ってんのに何で外にいんだボゲェ!」

だんだんと距離が近付くなると飛雄は私の目を見ながら大声で怒鳴り付けた。
私は突然の大声にびくりと肩を震わせた。

「おかえりなさい、飛雄」

「風でも引いたら」

「あのね、誕生日おめでとう」

飛雄の言葉を遮ってそう伝えると飛雄は目をパチパチと数回ほど瞬きさせた。
いつまでも無言のままの飛雄に私は先程作ったカップケーキを無理矢理渡した。

「…お前わざわざ作ったのかよ」

「うん」

「ありがとな」

珍しく言った飛雄の一言に私は嬉しくて、今なら天にまで舞い上がれるくらいだった。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -