私の声が届きますように | ナノ


「んで、何話したいんだよお前」

 飛雄は呆れながら私に尋ねてきたので私は
「あ、特にないよ」と思っていることを飛雄に伝えた。

「なっ、じゃあ何でわざわざ俺を待ってんだよ」

「最近話してないからって言ったじゃん」

「馬鹿だろお前」

「飛雄に馬鹿とか言われたくないっ」

そう言うと再び飛雄から睨まれたので私は視線を少し逸らした。すると飛雄は私の頭を小突いて「ほら行くぞ」と呟くと歩き出した。
私は慌てて飛雄のあとを追いかけると先程小突かれた仕返しにと思いっきり背中を叩いてやったら再び小突かれた。



 次の日の昼休みに会話したこともない先輩から呼び出された。
整った顔立ちで背が高くて男子バレー部に所属している先輩、名前は及川徹。
その名前は噂で何度も耳にしたことがあり呼び出された時は驚いた。
何で話したこともない私が呼び出されるのだと思った。
廊下で私を待つ先輩に私は声を掛けると先輩は微笑みながら人気の無い所へ行こうと先輩が言い出したので私はドキドキしながらも先輩について行った。
数分間、人気の無い場所を探し歩き渡り廊下を渡って別の棟へ移動したり階段を上ってついに先程までいた棟とは別の棟の四階まで来てしまった。
四階の音楽室前には人気が無く先輩はここでいっかと呟いた。

「玲子ちゃんだっけ?トビオちゃんと付き合ってるの?」

まわりに人が居ないことを確認してから先輩はいきなりそう言った。
先輩からの突然の質問に私は固まってしまった。
何故私を呼び出してまで聞こうと思ったのだろう。
部活が同じ飛雄に聞けばいいじゃないか。
私の頭の中でそんな言葉がぐるぐると回る。

「と、影山とはただの幼馴染みです」

 当然のことだが私は本当のことを言った。
それにこの手の質問は中学に入ってから何回かクラスメイトからされていて少々飽き飽きしていたので冷たい返答になってしまった。
すると先輩は、つまらなそうに溜め息を吐いた。
私の返答のしかたの所為だろうかと思ったが全然違った。
先輩の思考は私の予想を斜め上にいった。


「なあんだ、飛雄の彼女だったら奪ってやってたのに」

小さな小さな呟きだったけれど、私の耳にはちゃんと聞こえた。
私はムカムカする気持ちを相手は先輩だからと一瞬堪えたがやっぱり無理だ。
この人は飛雄を何だと思っているのだろう。
ああ、性格悪いくせに無駄に顔が整っているのが更に腹が立つ。

「及川先輩」

「ん、なあに?」

「飛雄に何かしたら許しませんからっ」

先輩の目を見つめながら先輩の顔に向けてびしっと指差してそう言ったら先輩は何故か大笑い。
私は真剣に言ったつもりだったのに。
笑われたことに対して私は何だか急に恥ずかしくなって「し、し、失礼します」と言い残してこの場から走り去って行った。

 私は自分の教室へと戻ると自分の席に着いて深い溜め息を吐いた。
すると斜め後ろの恵が心配そうに声を掛けてきた。
そう言えば私が先輩から呼び出されるのを彼女は見ていたんだった。

「及川先輩何だって?」

「あー大したことじゃないよ」

「そう?及川先輩、ああ見えて結構性格アレらしいから気を付けろって女バレの先輩たちが言ってたから私心配だったんだよ」

彼女は私にしか聞こえないように私の耳元でこそこそと話した。
今頃そんな注意されたってもう意味が無いけれどやっぱりあの先輩は性格悪いんだと思った。

 あんな先輩がいる部活にいて飛雄は大丈夫なのだろうか。
私は昼休みに教室で堂々と寝ている飛雄に視線を向けた。
今日のこと飛雄に伝えない方がいいよね。
同じ部活の人がそんなこと言ったの知ったら傷付いてしまうだろうし、変に意識してしまうだけだ。
それなら私が黙っておいて影から飛雄を守った方がいいに決まってる。

私は心の中で飛雄を守る会を結成し、これから守ること宣言するとまだお昼ご飯を食べていないことを思い出して鞄の中からお弁当箱を取り出した。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -