「名前」
「なにベル」
「ルッスーリアが菓子作ってたけどあれなに」
「知らないハロウィーンだからじゃない」
任務から帰ってきたばかりの彼に私がそう言うと彼は納得したのかああ、と頷いた。
「それにしても毎年毎年よくやるよな」
「ベルが菓子ねだるからじゃない」
「しし、そう?」
「そうだよ」
私は手元にある携帯ゲーム機に視線を向けながら適当に返事をしていたら彼は嫌だったらしく私が持っていた携帯ゲーム機を取り上げた。
「な、なにするの」
「王子に構えよ」
「やだ」
「即答かよっ」
彼がナイフをちらつかせてくるので私は仕方がないと溜め息を吐いた。
「構ってあげるよ、ばかベル」
私がそう言うと彼は、ししししっと笑った。
「名前ー、菓子」
「ない」
「ちっ」
私が即答すると彼は舌打ちしやがった。なんだよ、みんながみんなお菓子を持っていると思うなよ。
「名前」
「なに」
「イタズラけってー」
「はあっ」
彼は私の手首を掴んで床に押し倒すとニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「変態、どいて」
「やだイタズラする」「ルッスに言いつけるよ」
「どーぞ、ご勝手に」
彼は余裕たっぷりにそう言い切った。私が頑張って彼から離れようとしても彼の力に私が敵うはずなくて結局から離れることが出来ない。
彼は私の首筋に、つーっと舌を這えずらせると無邪気な子供のように笑う。やっていることは子供がしないことなのに、ちゅうっとリップ音をたてながら彼は私の首筋に痕をつけた。
「…っ、さいてぇ」
「菓子持ってないお前が悪い」
彼はそう言いながら私の服に手をかけたその瞬間だった。カチャリとドアが開く音がした。両手にお菓子を抱えたルッスーリアとマーモンが部屋に入ってきた。
「ベ、ベルちゃん!なにしてんの」
「ちっ」
「んまあっ、舌打ちなんてして」
彼もルッスーリアとマーモンが来たから流石に私から離れたが不満そうだ。私は服を整えるとふわふわと宙を浮いているマーモンを抱き締めた。
「ムギャ」
「マーモン、お菓子ちょうだい」
「やだよ、何で僕が君に菓子をあげなきゃならないんだい?」
マーモンは私にそう冷たく返すとルッスーリアから説教を受けている彼の方へ顔を向けた。
「ベルも馬鹿だね」
「うん」
「でも君も彼と同じくらい馬鹿だけどね」
私は笑いながら幾度か頷くと説教を受けている彼の元へ行って許してあげて、とルッスーリアに言ってあげた。
ルッスーリアは名前がそう言うならと言って説教をやめた。彼はというとルッスーリアが説教をやめても不満げだ。
「ベル」
「名前の所為」
「はあ?」
「後で責任取れよな」
ハロウィーンの夜
(彼の不敵な笑みに私の胸高鳴った)