「のあー! 宇宙の平和が破られたー!」
「はいはい、そりゃ残念でしたね。で、結局これって何なんです?」
「子ども向けの番組の主人公が着てるコスチュームだよ。あと何人か仲間がいて力を合わせて悪をやっつるってやつ」
「は……?」

 マジで正義の味方の衣装だったってのか!?
 あれが? 本当に? あんなので街をウロウロしてたら間違いなく警察に突き出されるぞ。

 平然と言ってのけた穂鷹に疑いの目を剥いたくど「そんなもんなんだって」と軽くあしらわれた。

「このレッド、着るとしたら誰がいいかなぁ」

 ぐしゃぐしゃに丸めて捨てたはずの衣装をまた引っ張りあげて緒方先輩が皆を見渡す。

「色でいくと壱都先輩?」

 何気なく、髪の色が赤茶だからってだけでの発言は、予期せず全員を黙らせる結果となった。
 固まったように私を見てくるのはどうして?

 耳が痛くなるような沈黙を破ったのは緒方先輩と穂鷹の笑い声だった。

「あ……あはははっははははっ!! ないないない!」
「ムリだよー、絶対ムリ!! 困った人がいてもその横素通りしちゃうような熱血漢とか有り得ねぇ!!」

 机をバシバシ叩いて笑い転げる二人を静かに眺める壱都先輩が怖い。

 しかし、キャラクターの設定まで考えてなかった。知らないのだから当然だけど、私はとんでもない間違いをしでかしたらしい。

 小暮先輩までが肩を震わせて笑いを堪えている。
 いっそ喧しい二人みたいに声を上げて笑ってしまえばいいのに。

「はー苦し! じゃあ次はイエロー。イエローは!?」

 爛々と瞳を輝かせて私の答えを待つ緒方先輩がちょっと可愛く見えるけど、これって早くなんか言って笑わせろって事だよな。

 別にそんなつもりで言ったんじゃなかったのに。

「黄色ですか。んー、神奈かなぁ?」
「響かぁ。まあ妥当だよね」
「やったじゃん、お前これから昼は学食でカレーな!」
「何だそれ……」
「イエローはカレー命なんだよ。カレーさえあれば生きていける」

 妥当か? 神奈がカレーばくばく食ってるのは妥当なのか?

 しかも嫌だな、そんな奴……。もっとまともな人間に平和を守らせてくれ。
 ていうか、そもそもそんな奴が正義語れんのか?

「神奈はどっちかっていうと、カレーを敵に投げつけてそうだな。容赦なく目に入れたりしてそう」
「してそう、してそう!!」
「してたまるか! 勝手な想像すんなよ」
「もーイエローは怒りっぽいんだからー。次いこ、次。えーとねぇブルー」

 残りの三人をじっと見て考える。

「んー……難しいけど。緒方先輩、かなぁ」
「えぇっマジで? あれだよ、ブルーって冷静沈着で策士タイプだよ?」
「間違えた」
「いいじゃん、間違えてないじゃん!!」

 確かに策士であることは間違いではないんだけど、冷静沈着っていう部分に大きな引っ掛かりを感じる。

 でも小暮先輩は逆に策士ではないし。これはこれで妥当だろう。

「後は、一匹狼のブラック」
「そりゃ、穂鷹か小暮先輩かって言ったら、圧倒的に小暮先輩ですよ」
「えー!オレは? ハードボイルドじゃないの!?」

 違うな。
 絶対一人にしたら寂しがるだろうしな。

「もう終わりですか?」
「まだあるよ。消去法で紅一点のピンクは穂鷹にけってーい!」
「ちょっ、な……、女の私を差し置いて穂鷹が紅一点ってどういうこと!?」
「自分が女だって自覚はあったんだな」

 さらっと神奈がムカつく事言ったけど今はあえてスルーだ。

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