「俐音っお前、俺を巻き込むな。めんどくせー」 「一人だけ除け者になんて出来ないじゃないか」 「本音は違うだろ」 「良く分かったな、一人だけ抜けようなんてズルい事させてたまるかってんだ」 渋る神奈を他所に皆は着々と日曜の計画を立て始めている。 私は連れて行かされる立場だから、あえてそこには入らずコーヒーを作って時間を潰す。 なんてブランドか知らないけど、ここに置いてあるコーヒーはムチャクチャ美味しい。 きっと高級豆を使用しているんだろう。絶対自分では買ったりしないからここぞとばかりに飲みまくっていたりする。 私のせいで最近コーヒー消費量が二倍くらいになってるだろうけど、知ったこっちゃない。 なんたってコイツ等は金持ち集団なんだから肖ってやるんだ。 淹れたてでもくもくと湯気を上げるコーヒーを無言で冷ましていると、まだ観念していなかったらしい神奈が文句を言った。 「勝手に計画立ててるけど、俺行くなんて言ってないぞ」 意外と往生際が悪いな。 ああ、でもその方が私は助かるんだっけ。 ここは黙っていよう。 「もー、ちょっと響諦め悪すぎー。たまにはいいじゃん、皆で遊ぼうよ」 「馨は人生がすべて遊びだろうが」 あー、確かに。しかもどう転んでも自分が得をするような道歩んでるよな。 「響は俐音ちゃんのミニスカ姿見たくないの?」 おい、穂鷹ちょっと待て。 誰がミニスカート穿くなんて言ったよ 「いいね、それ」 ちょっ、壱都先輩が何故か引っかかったんですけど!? こっち見ないでください! 「無理やり連れて行っても楽しくないだけかもしれないな……。でもやっぱり折角だから俺としては全員で行きたいし。だから、ゲームして響が俺たちに勝ったら行かなくてもいいってことにしよう」 公平に見えて実は5対1の勝負というかなり神奈に不利な条件だ。 小暮先輩は爽やかな顔をしてやる時はやる人のようだ。伊達にこのメンバーと一緒にいるだけのことはある。 そして何故だか私は行く側の人間としてカウントされているらしい。 もう趣旨が変わってきてますよ……? * 「よーし。じゃあ正々堂々の一発勝負!負けても恨みっこなしの『大富豪大会』開催!!」 一度カードが配られれば皆の表情は真剣そのもの。 なんでトランプにそこまで集中できるんだ。 とか思ってたのも手持ちのカードを見るまで。 数枚のカードを見て、この勝負の行方を悟った。 六人という人数を感じさせないほどのこの自分のカード運に鳥肌が立つ。 負ける気がしない。 ていうか、絶対勝つ! 「はい、上がり」 心の宣言通り、ほんの短い時間で終了。 勝ち誇る私を神奈が睨んでくる。 「俐音……お前何勝ってんだよ」 「え、私に負けたのがそんなに悔しい?」 「違うだろ、お前出掛けたくなかったんじゃないのかよ」 出掛ける……? 「あーーっ!!」 「アホ……」 そうだ、神奈に大富豪になってもらわないといけないんだった。 勝負に熱中してすっかりその事が頭から抜け落ちていた。 「神奈! お前いっつも一番に上がるくせに何で今日に限って負けてるんだよ、このバカ!!」 「バカはお前だ。熱くなりやがって……、あーめんどくせー」 くしゃりと私の髪をかき上げて、もう諦めたらしく「で、どこ行くんだよ」と神奈は緒方先輩に訊いた。 それに先輩は嬉しそうに答えている。 やっぱりな。 いくら抵抗しても結局は緒方先輩の都合よく物事は運ばれていくんだ。 私が、そういえばカードを配ったのは緒方先輩だったな……、と気が付いたのはかなり後になってからだった。 |