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 目的地は俐音の家から程近い場所にある公園で、そこに何人かの女の子たちが待ち構えているのが離れたところからでも見えた。

「あれ、もっと多いのかと思ってた」
「こないだ響にブチ切れられて、人数減ったみたいだね」

 俐音は神奈が本気でキレたところを見たことは無いけれど、かなり怖そうだと思った。
 それにもめげずにここに来たあの子達は強い精神力を持った人達という事になる。

「どうもー」

 ピリピリとした場の雰囲気を壊すように、へらへらと笑って成田は女の子たちに話しかけた。

 俐音は穂鷹の少し後ろで息を殺して立ち止まる。 どうか誰も私の存在に気が付きませんように……。

 この期に及んで、まだそんな事を言っているのかといった感じもするが、俐音にとっては切実だ。
 だがその儚い願いは一瞬にして脆くも崩れ去った。

「その子、誰」

 虫くらいなら射殺せそうな鋭い睨まれて咄嗟に下を向いた。

「オレの彼女。可愛いでしょ? オレもうこの子のもんだから君たちと遊べないんだ」

 いらねぇよ。

 穂鷹に肩を抱かれながら、そうはき捨てようとしたが、慌てて言葉を飲み込む。

 いけない、表情に出なかっただろうか。実は恋人でも何でもないとバレたら困るのは穂鷹だが、絶対に俐音も逃げられず巻き添えを食うに決まっている。
 それは嫌だった。

 疑われないようにするためには、兎に角恋人らしくしなければならない。
 だが、具体的にどうすればいいのか全く思い浮かんでこなかった。

 必死になってあれこれ考えている間に、穂鷹と女の子達で話し合いはいつの間にやら展開があったらしく、何かを叫んだ女の子が一人、俐音めがけて突進してきていた。

「わぁっ!」

 反応の遅れた俐音を穂鷹が引っ張ったお陰で衝突は免れた。

「俐音ちゃん大丈夫?」
「うん……ありがと」

 女の子は前のめりになったが、すぐに体勢を直して、キッと睨み続けてくる。
 穂鷹は肩を竦めて「もうちょっと我慢してね」と小さく言った。

「オレ今俐音ちゃんしかいらないから。ホントごめんね」

 あっさり心にも無い嘘をつくものだと感心して穂鷹の顔を見上げると、謝罪しているというのに笑っていた。

 やはり、そんな穂鷹の態度が気に食わないのか、それとも自分達の意見が受け入れられるまで抗議し続ける気なのか、女の子達は一向に納得した様子はない。

「何でよ、恋人は作らないって言ってたじゃない。こんな子今まで見たこと無いし、私たちの方が付き合い長いでしょ!?」

 こんな子と言われて軽くショックを受けた俐音は、ははっと乾いた笑いを漏らし、更に女の子達に睨まれた。

「いっつも皆に変わらず笑ってくれてたのに! 今だって」
「だからじゃないの?」

 自分でも驚いたけど、口から勝手に言葉が出ていた。



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