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 成田からのメールで指定された場所に来てみれば、そこはお洒落なセレクトショップ。
 ここで合っているのかと、ウィンドウから覗くと見慣れたオレンジの頭が目に入った。

「あ、俐音ちゃんいらっしゃーい!」
「成田……何ここ」
「うん、ここウチの店。んじゃ早速これに着替えて」
「な、なり――」

 説明もなしに大きな紙袋を持たされて「スタッフオンリー」というステッカーが貼られたドアを抜け別室に押し込まれる。

「何なんだ……?」
「お久しぶり」
「!?」

 俐音は放り込まれたドアのほうを向いて呆然と立っていたのだが、部屋の中から届いた声に振り向いた。

 部屋はメイク室そのもので、壁には鏡がはめ込まれていて、その前には机。そしてその上にはこれでもかと言うほどにメイク道具が並べられている。

 メイク道具に囲まれるように、机に腰掛けている綺麗な顔をした女性が一人。さっきの声の主だろう。

「……あ、お久しぶりです」

 腕を組んで笑っている女性は、以前に一度だけ会った事がある成田の母親だった。

「やーっと着せ替えごっこ出来るわねー。私楽しみにしてたのよ。さ、服脱いで!」

 テキパキと俐音の持っていた袋から服を取り出して広げ、今着ている服に手をかけた。

「え? ちょ、わっ、何するんですか!」
「着替えるのよ」
「何で!? てか自分でします、一人で着替えます!あっち向いててください!」
「えーいいじゃない」

 よくない! とつい大声を出しそうになって俐音は唇を噛んだ。

 外見も然ることながら、中身も似通った部分がちらほらと見受けられて、成田と間違いなく親子なんだなと思い知らされた。

 手は離れたものの、拗ねるような表情で見詰められてはやりにくく、ソファに隠れてなんとか着替えを終わらせた。

「あら可愛い! やっぱり女の子はスカートよねぇ」

 そういう彼女自身はジーンズを穿いているのだが、その辺りはきにしないらしい。
 というよりも、俐音が女である事に何の疑念も抱いていない態度が不思議だ。
 もしかしたら成田が予め説明していたのかもしれない。



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