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 安静を言い渡された俐音と、その付き添いに福原を残した四人が買い出しに出掛けて戻ってきてみれば、リビングのソファに座って読書をしている福原の膝で俐音がすやすやと寝ているという、以前どこかで見た事のある構図になっていた。

 前回学校の特別棟で見たときは、男同士でと思ったが、俐音が女だと知った今では別の感想が生まれてくる。

「俐音ちゃんって警戒心強いくせに、こういうところ全く気にしないから誰も男だって信じて疑わなかったと思うんだよね」
「確かにねぇ。こんだけ男に囲まれた状況で熟睡ってすごいよね。しかも女だってバレたのに」
「まず女だって自覚が足りないんじゃねぇの」

 成田と緒方、神奈は俐音の顔を覗き込んで、本人が寝ているのを良いことに好き勝手な事を言う。
 だけど、それが事実だから小暮もフォローのしようがなく苦笑しか出来ない。

「そう言えば壱都は鬼頭が女だって言われた時、全然驚いてなかったな」
「知ってたから」
「リンリンに教えてもらってたの!?」

 今話した通り、普段一緒にいても全く気づけるものではなかった。なら本人から教わるしか方法は無い。
 だが福原は首を横に振って否定した。

「どんなに頑張っても女の子にしか見えないのに、男だと思いようがない」

 きっぱりとそう答えて自分の膝を占領している俐音の頭を撫でた。
 だったらまんまと騙されていた緒方達はどうなんだという話だが、福原はどこか違う次元で物事を見ていると認識している四人はさして気にしない。

「ん……あーうるさい!」
「うわ、ごめん」

 さすがにこれだけ周囲で会話をされると目が覚めたらしく、起き抜けにキッと睨まれて成田は思わず謝った。
 俐音は睨んだまま視線を落として成田の足元に置いてある袋を見やった。

 色とりどりの絵が描かれた物を取り出す。

「はなび……?」
「あ、そうそう。夜になったらみんなでやろうと思ってさ」
「やった事ない、やりたい」

 しげしげと花火を見詰めながら、少し舌っ足らずに呟いた俐音が微笑ましくて、子どもにやるように成田は髪を撫でた。
 事あるごとにこうやっている福原の気持ちが理解出来ると笑いながら。




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