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「そういえばあの子が面白い事言ってたよ。馨が好きそうな」
「え、なになに」

 もう既に目を輝かせている緒方は先を促す。

「この近くのどこかに真実を映し出す鏡を祀ってる祠っていうのがあるんだって。どんな嘘も見破っちゃうすごい物らしいよ」
「また胡散臭い……。しかもどこかってどこだ」
「それを探すのも醍醐味だよ!」

 どうやら福原の話がお気に召したらしく、緒方は一人その鏡を探しに行く気になっている。
 だが、今まで散々遊んでいた他のみんなは疲れもあってそれほど乗り気ではない。

 もうすぐ夕方になる時間だが、陽はまだ上の方にある。
 避暑に来たのだから、普段生活している場所に比べればいくらか暑さはましだが、夏なのだから涼しいとまではいかない。
 こんな中を、今から当ても無く歩き回りたくはなかった。

「今日はもう帰ってさ。明日にしよ、ね? 馨」
「えー、みんな若者じゃない! 体力無さすぎ!」
「熱中症になったらどうしてくれんだ」

 神奈は肩にかけていたタオルを俐音の頭にバサッとかけて両端を顎の下で結んだ。

「……何」
「だから、熱中症対策。髪黒いから余計熱こもるだろ」
「今更なような……しかもこれ結ぶ必要あんの」
「なんとなく」

 ひどくさっぱりとした返答にもうそれ以上追求する気になれなかった。

 帽子の代わりでいいかと思ったのだが、ふと口元を手で押さえて笑いを堪えている成田が目に入ってきて慌ててタオルを取る。

「わ、笑うなら普通に笑えよ! 余計ムカつく!!」
「あっははは!!」
「……やっぱ笑うなっ!」

 そのタオルで成田の顔を叩いて無理矢理黙らせようとするも、逆にタオルを掴まれて更に笑われた。

「はーもう、農家のおばちゃんみたい……あ、ちょっと思い出し……」
「思い出すな! 笑うんじゃない馬鹿、農家の方に失礼だ!!」

 成田を罵りながらもう一度頭にタオルを被って俐音は顔を隠した。

 恥ずかしすぎて顔が赤くなっているだろうと気がついての行動だったが、それは成田にも判りやすすぎたようで、更に笑いを誘う結果に終わったのだった。





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