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 存分に海を堪能した四人が砂浜に戻ってきたら、二人の姿は消えていた。
 暇になって屋台の方まで足を伸ばしているのだろうかと思ったが、逆方向からとぼとぼと歩いてこちらに戻ってくる福原と俐音が見えた。

「どこ行ってたの?」
「その辺」

 自分達がいる砂浜の延長線上を指差す俐音。
 緒方が目を凝らして指の先を見てみても、何も変わったところはない。

「なにしてたの?」
「神様にお願いしてました」
「か、カミサマいたの!?」
「いえ」
「えっとリンリン?」

 どうにも要領を得ない。
 福原の方を見ても笑っているだけで補足説明をしてくれそうになかった。

 他のみんなも同じで、何を言っているんだろうという顔をしている。
 みんなはそれ以上追求する気はないが、俐音が神様と称される普通では視えないはずのものが視える事を唯一知っている緒方は黙っていられない。

「説明してもらっていい?」
「波の当たる瀬戸際に、願い事を書いた紙を埋め込んだ土の山を作って、その土と紙を波が綺麗に攫ってくれたら願いが叶うんですって」

 だから、さっきの男の子は一生懸命に頑張っていたのだ。
 もうすぐ弟か妹が出来るのだという。

 母親は最近つわりが酷いと苦しそうで、父親はそんな母親につきっきりで看病をしている。
 それを見て男の子は自分は何をすれば良いのかと必死で考えて、そして無事に赤ちゃんが生まれますようにと精一杯願う事を思いついた。

 たった一人で、何度も途中で海水に崩されては、また作り直して。

 俐音と福原が手伝ってようやく完成した頃、父親が迎えに来て男の子は帰っていった。

「願い事ねぇ」

 神奈は全く信じていない様子で言う。どこか馬鹿にしたようにも聞こえる。

「で、どうだった?」
「何が」
「願い事が叶う瞬間とやらは。ずっと見てたんだろ」
「特には……。気が付いたら砂が無くなってた」
「ま、そんなもんだろうな」

 感情の籠もらない神奈の返事に、コイツ冷めすぎだ。と俐音は心の中で毒づいた。



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