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 成田にしてみれば、ひどく心外な印象だ。

「あ、あ、テストが終わったら面談だね!」

 自分はあまり立ち入ってはいけない内容だと判断した駒井は咄嗟に会話を変えた。
 苦しい変え方だったが、他の三人は気にした様子はない。

「そうだ、それ残ってた。やだなー。俐音ちゃんはこの前電話してた……菊さん? あの人が来るの?」
「うん、多分」

 歩いて十分とはいえ、あの菊がここまで来るのだろうかという心配はあるが、保護者は菊しかいない。

「じゃあ会えるかも? どんな人なのか前から気になってたんだよね」
「ただのアホだよ。ドを付けたいくらいの」
「良かったな、お前気が合うんじゃないか?」
「うっわ会ってみたいな……って、ちょっと響?」

 成田と神奈のやり取りを聞きながら駒井は笑っていた。
 駒井は寮生だ。理由を聞いた事はないが、通えないほど家が遠いのかもしれない。

「駒井はお母さんが来るの?」
「僕? ……は来ない、よ。親いないから」

 駒井の言葉を聞いても神奈は顔色一つ変えずにご飯を食べていた。
 成田は、一瞬だけ目を大きく見開いたが、何も言わなかった。

 二人とも他人の深いところまで入り込まない主義を徹底している。
 俐音の事も、いろいろと疑問に思っているだろうが差し障りの無い事しか尋ねてこない。

 だから俐音も二人に何も聞かないし、今のところは聞かなくていいと思っている。
 駒井に対してもそうだ。何気なく言ってみただけで、あれこれ質問するつもりもない。

「そっか。じゃあ俺と一緒だ」
「一緒じゃないよ!!」

 大きい声を出して反論したことに、一番驚いているのは駒井自身だった。

 ずっと心の中で思っていた、でも口に絶対にしてはいけないと押し込めていたものが一瞬で膨れ上がって飛び出した。

「ご、ごめん……。僕もういいから食器返してくるね」

 慌てて立ち上がって駒井は教室から出て行ってしまった。




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