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 ただでさえ混む食堂に一クラス全員で押しかけたせいで、調理をしていたおばちゃんたちはてんてこ舞い。

 いつもは笑顔でご飯を渡してくれる人も、表情を無くし黙々と流れ作業をこなしているのに、俐音は少し申し訳ないような気持ちになった。

「お弁当と半々にした方が良かったかな……」
「おばちゃん大変そうだったもんね。でもお弁当だと券じゃないからさ、みんなに現金配る事になっちゃってたよ、それって生々しくない?」
「それもそうか」

 食堂の限られたスペースを占領するのは気が引けて、教室まで持って帰ってきた。適当に机をくっつけて、俐音・成田・神奈・駒井で食べている。

 俐音はふとご飯を食べながらプリントを睨んでブツブツ呟いている生徒に目をやった。

 そういえば最近、こうやって休み時間にまで勉強をしている人の姿を見かける。

「あれ何やってんの?」
「あぁ、俐音は初めてだったな。テスト前はいつもあんなもんだ。赤点とって補習に一つでも引っ掛かれば夏休み返上だからな」

 水無瀬学園のテスト期間の光景は凄まじい。

 学期末に一度しかテストをしないので、範囲が広い上に全教科ということもあり、この時ばかりはみんな必死で勉強をしている。

 特に特進クラスは他のクラスよりも条件が厳しい。
 一応エリート校と銘打っている事もあり、評価に対してはシビアなのだ。

「へぇ。みんなそんなヤバいのか?」
「さぁな」
「俐音ちゃん響の態度に騙されちゃダメ! ほんっとに死ぬ気で頑張らないとキツいんだから」

 力説する成田に駒井が強く頷いている。

「でも成田は勉強どころか授業受けてないじゃないか」
「えー、最近はちょいちょい出てるよ! それにオレは家で一人の方が捗るから」
「……家!? 遊び回ってんだろ、家になんて帰ってないはずじゃないのか?」
「はずって何!? そんな毎日遊んでるわけじゃないから!」

 かなり意外な答えだった。
 俐音は今までの成田の口ぶりから、毎日毎日女の子を換えては夜な夜な遊んでいて家にほとんど居ないのだろうと思っていたのだ。



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