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「……鬼頭、金オーバーしそうか?」
「んー大丈夫っぽいけど。けち臭いな、あんた何歳?」
「野暮なこと聞くなよ」

 自習になった数学の時間中に、全員何が食べたいか集計を取って、先に食券を買いに行くことにした。

 昼休みに入ってから、こんな大量に買っていると他の生徒に迷惑が掛かるからだ。

 お金を持っているのは鬼頭なんだからと押し付けられ、そして俐音は足りない分を払ってもらわないとと担任を引っ張って来て今に至る。


 次々と自販機のボタンを押していた俐音は、視界の端に授業中だというのにのんびりと食堂に入ってきた人影が見えてそっちを向いた。

「うわ、何? どういう経緯でその組み合わせ?」

 ヘラヘラと笑いながら近づいてきたのは成田だった。

「担任に昼ご飯おごってもらうんだ」
「マジで? じゃあオレもー」
「アホか。成田は賭けの時いなかっただろうが」
「賭け? 先生のくせに何やってんのさ、まっちゃん。理事長には黙っててあげるから日替わり定食ね」

 いつも一緒にいて、考え方まで多少似てきてしまっているのか、教室で俐音が言ったのと同じ脅し文句を言う成田に、既に日替わり定食のボタンを押しながら、俐音はコクコクと頷いている。

 これでは成田達と一括りに見られていても文句は言えない。

「あ、響の分!」
「いらん、いらん」
「ちょっと待って、電話してみる」

 増田の言葉に耳を貸さずに成田は携帯電話を取り出した。
 それに増田は忌々しげに舌打ちを返す。

「あんたそんなにお金に困ってるのか?」
「阿呆。金額の問題じゃないんだよ。ガキ共との勝負に負けて自分が損をするってのが我慢ならん」
「要するにあんたもガキだって事だな」
「そんなんばっか言ってると痛い目合うぞ? 鬼頭」

 隣にいたはずの増田は気がつけば後ろに下がっていて、俐音の膝を足で軽く蹴った。

 体の重心をかけていた方の足の膝だったせいで、カクンと体が簡単に沈む。

 前屈みになったまま振り向くと、増田はニヤニヤと笑っていた。

「な……にすんだ!」
「教育的指導」
「どこが!?」

 電話をし終えた成田の後ろに素早く隠れて、顔だけ出した状態で増田を睨みつける姿は毛を逆撫でて威嚇している猫のようだ。



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