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 俐音としては、自分にサボり癖がついているとは思えないし、真面目に授業に出ているはずだ。

 ただ、入学してから今まで成田や神奈と行動を共にしている事が多いから、あいつ等はサボり魔と一括りにされてしまっているのが不本意でならない。

「鬼頭ちゃんと来たのか! エラい、でかした!」

 大股に近寄ってきたのは昨日授業に出るようにと何故か念を押してきた奴。

「あ、ああ。まあ?」
「クッソー、絶対サボると思ってたのにー!!」

 他の奴は頭を抱えて悔しがっている。

 状況が全く理解できていない俐音に駒井が笑いながら説明する。

「みんなと増田先生でね、次の授業を鬼頭くんがサボるかどうか賭けをしたんだ。あっ僕はやってないよ!?」

 慌てて駒井が首を振る。
 友達をダシに儲けようという気にならなかったらしい。

 いい奴だなぁと駒井の頭を撫でながら、前で喜んでいるクラスメイトが一発稼ぐとか意味の分からない事を言っていたのを思い出した。

 一体何人でやっていたのか知らないが、これだけみんなが悔しがっているという事は、それなりの額になっているのだろう。

「……俺がサボるって賭けた奴出てこい」

 有無も言わさぬ威圧感を放ち、十数名のクラスメイトが俐音の前に立った。

「賭け金出せ」
「何でだよ!」
「元々無くなるはずだった金だろうが。本人の預かり知らん所で儲けようなんざ虫が良すぎるんだよ!」

 文句を言うクラスメイトたちを怒鳴りつけ、お金を出させる。

「今度こんな事やってみろ、ただじゃおかないからな」

 回収したお金を数えながら、お決まりとも言えるセリフを吐いた俐音は、いつもより一回りは大きく見えたという。

「じゃあこの金でおいしいモンでも食べるか、駒井」
「え、僕?」

 ちょっと後ろで傍観していた駒井がいきなり話題を振られて、驚いて目を大きくする。
 自分は話によっていないと思っていた。

「賭けしなかったんだろ? 食堂で何か食おう。アイスも食べられる。他にもしなかった奴いるか? おごってやるぞー。遠慮するな、俺の金じゃない」

 賭けに勝った側の生徒は自分達の取り分が無くなって大ブーイングだが、完全に無視をする。

 俐音は手に持った札をひらひらと扇いで酷薄そうに笑った。


 授業の始まるチャイムが鳴り担任が教室に入ってきた途端、眉をひそめた。

「あ゛、鬼頭いんのかよ……。クソ」
「教師のくせに生徒に賭け事持ちかけてんなよ! つかサボる方に賭けたのか!!」
「かなり自信あったんだがな」
「俺はいつも神奈や成田ほどサボってないだろ!? 出席簿を見てみろ!」
「だって俺なら確実にサボってるぞ」
「根拠になってないしお前を基準にすんな! ……よし、やっぱり全員で食べに行くぞ。賭けに負けた奴らの金で足りなかった分は全部この担任様が出す」

 俐音の提案に皆が騒ぎ出す。

「おい、何だそれは!?」
「この事、学校側に知らされたくなかったら大人しく言うことを聞いとけ。学食の値段なんてしれてるだろ」
「鬼頭ぉテメェ……」

 その後の授業は、増田が放棄してしまったため自習となった。




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