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「この数日、学園内で女性が相次いで目撃されているらしい」

 全員がソファに座ると小暮が口を開いた。

「新田先生じゃなく?」

 新田先生とはもうすぐ定年を迎える年だというのに自分を着飾ることに余念がなく、また他人の目を引く服装が大好きという英語担当の教師だ。

「違う違う。あの人なら全員すぐ分かるだろ。それに目撃されたのは若い女の人だよ」
「若い……」

 ドキッと心臓が跳ねた。俐音は自分のことかと思ったのだ。
 十分気をつけているし、一番一緒にいるこのメンバーにでさえ未だ気づかれていない。
 それでも感のいい生徒には判ってしまったのだろうか。

「まーっ! 俐音ちゃんったら気になるの? 女の子大好き?」
「お前と一緒にするな!!」
「ひっどいなー、確かに女の子大好きだけどね」

 間違ってないのかよ!?
 適当に言ったのにヘラヘラと笑いながら肯定されて、コイツには不用意に近寄らないでおこうと隣に座っていたが、少し場所をずらした。

「ホントにいるのか? 普通部外者は入って来れないだろう」

 俐音と成田の会話を無視して神奈が話を進める。

「俺もそう思ったんだがな。理事長が調べろって言うし」
「ああそう……。まぁその女がいるのか調べて、いたら捕まえりゃいいんだな?」
「そういうこと」

 話が一段落したところでずっと黙っていた緒方が口を開いた。

「よーっし! じゃあ早速捜索開始だね、リンリン行くよ」
「へ、俺!?」

 緒方は驚く俐音の腕を握り締め、そのまま引きずり出て行ってしまった。

「頑張って……鬼頭」

 みんな暫く二人が出て行ったドアを見ていたが、福原が静かに呟いた。
 カップに注がれた紅茶を口に含みながらのその言葉に一体どれほどの気持ちが込められているのかは知れない。

「珍しいな、馨があんなにやる気みせるなんて」
「なんか企んでなきゃいいがな」

 予感めいた神奈の言葉に、他の三人は俐音に同情しつつも「自分じゃなくて良かった」と胸を撫でおろしたのだった。

「でも大丈夫かなぁ」
「そんな気になんなら一緒に行きゃ良かっただろ」
「いやぁ、馨が嫌がるでしょ?」

 成田は緒方が幽霊だとか、怪談の類の話に敏感な理由を知っている。
 ここにいるみんなも何となくという程度なら分かっているだろう。
 だから緒方は俐音を連れて行ったのだという事も。




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