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「いっつもさぁ、外部の人が帰った後に生徒が集まって有志のイベント見たり売り上げ順位発表とかしてなかったっけ?」
「そういや。まっちゃん!?」

 腕を組んで机に凭れていた増田に説明して今年はないのかと訊けば、「あー……」としばらく考えてから簡潔に答えた。

「忘れてたわ」
「そ、それでも教師?」
「忘れてたもんはしゃーねーだろ。つか、お前等も一人くらい覚えてなかったのかよ。おいクラス委員?」

 突然話を振られて驚いたクラス委員だが、すぐにムッとして言い返した。

「オレはあんたが『片付けるぞ』とか言うから、集会はその後だと思ったんだよ!」
「なわけねーだろ、何年この学校いんだよ」
「自分の事棚にあげてなんだよ、その言い種ー!」
「まっちゃん他人のせいにしちゃダメっスよー」

 生徒に当然の非を咎められた増田だったが、ここで反省するはずもなく、まして謝るような人物ではない。
 新たにタバコを一本取り出して不遜に笑った。

「それが俺が俺たる所以だからな」
「か……、カッケー!」
「うわー何そのセリフ惚れる!」

 馬鹿ばっかりだ。
 少し離れたところで成り行きを見ていた俐音は口をへの字に曲げた。

「つける薬もねぇな」

 いつの間にか俐音の隣に立っていた神奈もボソリと呟く。

「いやぁ、みんなも立派に賑やかだよねー」
「あれを立派と言うか?」

 笑い飛ばす穂鷹に、神奈は心底疲れたように問うた。





「あー疲れたー」
「もう暗くなり始めてるし……」

 靴を履き替えて空を見上げれば夕日も沈みかけている。

 他のクラスからの情報だと売り上げは俐音のクラスは三位だったらしい。
 三位は表彰状のみのはずだったのだが、その場に誰一人としていなかったのは前代未聞だ、その意外性が気に入ったと校長の独断で特別にクラス全員に学校の校章が入ったボールペンが貰える事になったらしい。

 完全な好意からくる記念品だが、特に欲しいと思うものではなかった。

「一位は馨んとこだったみたいだね」
「へーえ、賞金三万円だっけ」
「生々しい数字だな」
「ていうか現金ってどうなんだ」

 疲れているため、ダラダラとした歩調になってしまう。

「じゃあね。バイバイ、俐音ちゃん」
「うん、また」

 背を向けて俐音とは逆の道を歩く神奈と穂鷹をしばらく見送った。
 何となく、ただ何となく寂しさを感じる。

 道が別れた瞬間に、自分だけが区切られたような、そんな気がしたから。
 それは性別が違うからとか付き合いが短いだとか、そういうものではなくて。
 もっと、もっと底にある……

「帰ろ」

 考えを掻き消す様に呟くと、薄暗い辺りにとけ込んで既に姿が見えなくなった二人に背を向けて菊の待つ家へと歩き出した。



end




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