▼page.13 「じゃあ先に帰ってマスね俐音、今日は私がご飯作りマスからゆっくり……」 「せんでいい! お前がゆっくりしてろっ」 菊の背中を押してドアの外にやった。ガラスのドアの向こうから手を振って帰っていく菊を見て、自然と息を吐く。 「菊さんって面白い人だねー」 否定は出来ないが、緒方にそれを言われるのは少し可哀想だと俐音は思った。 「緒方先輩もそろそろ戻らないと小暮先輩が怒るんじゃないですか?」 「もー聞いてよ! 今日だけで聡史に何回怒鳴られたか。ちゃんといっぱいタコ焼いたのにさ。サービス精神も忘れずに!」 「過剰なサービスは逆に嫌がらせに繋がります」 「えー! リンリン達のは特別に奮発したんだよ!?」 かつお節も青海苔もソースも、緒方にとっては立派なサービスだったらしい。 俐音はまだ食べられたが、神奈は青海苔を除けるのに苦労していたし、樹は手にソースが垂れてベタベタになったと困っていた。 それなら普通に、個数を増やしてもらいたかったものだ。 「たく、バカばっかだな」 「増田せんせーそれ酷くない? 僕お客様だよ? 神様だよ?」 「うるせー、もうとっくに店仕舞いしてんだろ。邪魔だからとっとと帰れ。ハウス!」 犬を退かすように緒方を追い払って増田はニヤリと笑った。 「鬼頭そのカッコに違和感なくなってるじゃないか」 「黙れ変態オヤジ」 「だーから、その可愛くない態度どうにかしろっての」 「俐音ちゃんはこのままでいいんだよねー」 緒方達の皿を片付けていた穂鷹が助け舟を出す。 「あ、穂鷹セーターありがと。洗って返す? でも帰り寒いか」 「いいよ、帰りもらう。そんで俐音ちゃんの温かさと残り香を……」 「変っ態!」 穂鷹の背中を思い切り引っ叩いた。 「神奈ぁ! 穂鷹が変態で大変ー」 「なんだそりゃ。変態はいつもだろ」 「それもそうか」 「そんな事ないって! どこが!?」 「全てが」と俐音と神奈は同じタイミングで返した。 そんな俐音達にクラスメイトは「お前等いっつも賑やかだなー」と半分呆れながら言う。 「なぁ話変わるけど、一つ気になってた事あんだよね」 和やかに喋りながら作業を続け、殆どラウンジが綺麗になった頃、一人がそう切り出した。 前 | 次 戻 |