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「じゃあ先に帰ってマスね俐音、今日は私がご飯作りマスからゆっくり……」
「せんでいい! お前がゆっくりしてろっ」

 菊の背中を押してドアの外にやった。ガラスのドアの向こうから手を振って帰っていく菊を見て、自然と息を吐く。

「菊さんって面白い人だねー」

 否定は出来ないが、緒方にそれを言われるのは少し可哀想だと俐音は思った。

「緒方先輩もそろそろ戻らないと小暮先輩が怒るんじゃないですか?」
「もー聞いてよ! 今日だけで聡史に何回怒鳴られたか。ちゃんといっぱいタコ焼いたのにさ。サービス精神も忘れずに!」
「過剰なサービスは逆に嫌がらせに繋がります」
「えー! リンリン達のは特別に奮発したんだよ!?」

 かつお節も青海苔もソースも、緒方にとっては立派なサービスだったらしい。
 俐音はまだ食べられたが、神奈は青海苔を除けるのに苦労していたし、樹は手にソースが垂れてベタベタになったと困っていた。

 それなら普通に、個数を増やしてもらいたかったものだ。

「たく、バカばっかだな」
「増田せんせーそれ酷くない? 僕お客様だよ? 神様だよ?」
「うるせー、もうとっくに店仕舞いしてんだろ。邪魔だからとっとと帰れ。ハウス!」

 犬を退かすように緒方を追い払って増田はニヤリと笑った。

「鬼頭そのカッコに違和感なくなってるじゃないか」
「黙れ変態オヤジ」
「だーから、その可愛くない態度どうにかしろっての」
「俐音ちゃんはこのままでいいんだよねー」

 緒方達の皿を片付けていた穂鷹が助け舟を出す。

「あ、穂鷹セーターありがと。洗って返す? でも帰り寒いか」
「いいよ、帰りもらう。そんで俐音ちゃんの温かさと残り香を……」
「変っ態!」

 穂鷹の背中を思い切り引っ叩いた。

「神奈ぁ! 穂鷹が変態で大変ー」
「なんだそりゃ。変態はいつもだろ」
「それもそうか」
「そんな事ないって! どこが!?」

 「全てが」と俐音と神奈は同じタイミングで返した。

 そんな俐音達にクラスメイトは「お前等いっつも賑やかだなー」と半分呆れながら言う。

「なぁ話変わるけど、一つ気になってた事あんだよね」

 和やかに喋りながら作業を続け、殆どラウンジが綺麗になった頃、一人がそう切り出した。




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