▼page.14 「お前、私が倒れた原因に自分が含まれてないとでも思ってんのか! バカ!」 「倒れただぁ? 寝てたんだろ。つーか俺が何したって言うんだ。なんだったら今からしてやろうか」 「しなくていい! するな!!」 どうしてそっちに話が向かうのか。 ネクタイを掴んで引き寄せてくる響の口に手を当てて突っぱねる。 「ひーびき! 俐音ちゃん嫌がってるだろ!」 「お前が言えた事か」 穂鷹が響の首に腕を回して、俐音から剥ぎ取った。 確かに穂鷹に言われたくないだろうが、俐音としてはこの際誰だっていい。 「俐音、向こうで休憩しよっか」 「はい!」 壱都の誘いに素直に乗って立ち上がるも、隣にいる響に腕を引かれた。 「まだお前ら来たばっかだろうが!」 「ああ? 病人に無理させて良いと思ってんのか」 「だから寝てただけだろ」 「だけ、だと?」 頭痛を甘く見る響に、やっぱりここは頬を抓っておこうと手を伸ばす。 ちょっとは痛みに耐える辛さを思い知れとばかりに。 「響のほっぺたなんて伸びきってしまえ!」 「い……っ、俐音テメェ」 「にゃっ!」 俐音の右手を払いのけ、素早く両頬を抓り返す。 力はそれほど入ってないから痛くはないのだけれど、倍返しされたという気持ちが大きい。 先に仕掛けたのは俐音だというのに、仕返しだとまた響の顔を掴んだ。 「この一年ずーっとこんな感じだったよねぇ」 のんびりと眺める緒方と壱都は既に休憩を始めていた。 「楽しいでしょ」 「うん!」 「あ、緒方先輩そういえば、私に物申す事ってなんだったんですか?」 「もういいよー」 もう大丈夫そうだから。 このまま俐音が特別棟を離れるようになるかもしれないという心配は杞憂に終わった。 「それはもういいとして、来年もこんくらい楽しいといいよね」 「何言ってんだ受験生」 「ああ、現実の壁がぁ」 俐音がこの学校に通うようになってもうすぐ一年が経とうとしている。 とても早かったように思う。 こんなにも沢山の人と出会って、泣いたり笑ったりしてる自分を以前は想像さえしていなかった。 来年も、これからもずっとこんな風でいられたらいいのに。 そんな事は現実的じゃないと分かっていても願わずにはいられなかった。 end 前 | 次 戻 |