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 だが自分の行為に多少なりとも罪悪感が付きまとうので、これもまた反論の余地はない。

 響がずっとそっぽを向いたまま黙っているところを見ると、穂鷹と同じような心境なのだろう。
 彼の場合、謝りはしないが。

「まぁ鬼頭がニブ過ぎるのも問題なんだろうけど」

 穂鷹も響も、傍から見れば逆に心配になるほど態度に出ているのだけど、一向に気付く様子はない。
 かと言って先走れば今回のようになってしまうし、案外難しいところだ。

 この二週間ほど、俐音は必要以上にこの特別棟を訪れなくなった。
 来ても挙動不審で、話しかけただけで大袈裟にビクつき、あからさまに接触を避ける。

 今のところその症状が現れているのは響に穂鷹、それに壱都くらいだ。これは彩からの情報。
 教室でも彩と常に行動を共にし、二人から遠ざかっているらしい。

 最初こそ笑っていられたが、これだけ続けば心配になってくる。
 壱都から無言の重圧も日毎に重くなっているようだ。

 だからいい加減どうにかしろよ、という意味合いを込めた説教なのだ。

 穂鷹も響も重々承知している。だけど思わずにはいられない。

 俐音が入学してきた当初は響達とくらいしか話をしていなかった。
 何時からかクラスメイトとも打ち解け、最近では生徒会にも出入りしているのを見ると思ってしまう。

 “そんな奴等となんか仲良くならなくてもいいのに”

 何度口をついて出そうになったか分からない。
 誰と話していても、絶対にこっちに戻ってくると知っているけれど。
 全面的に頼りにされているのは自分達だけなのだと分かっていても。


 ヴー、と携帯が振動する音が静かになった部屋に響いた。

 面倒くさそうに取り出した壱都は、画面を確認して目を見張り、けれどすぐに表情を無くす。

「俐音が倒れたって」

 三人は腰を浮かせたが首を振って制した。

「俺が行く。穂鷹と響が行ったらややこしい」
「じゃあ俺が行こうか? 壱都も思い切り避けられてるだろ」

 もう一度首を振る。
 そのまま何も言わずに出て行った壱都に、訳が分からないと小暮は肩を竦めた。



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