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「たーのもー」

 部室棟と呼ばれる各部活の部室ばかりが並ぶ校舎に入って、柔道部と書かれた部屋のドアをノックもせずに開けた。

「……あれ、もっと汗臭いのかと思ってた」
「ぶっ!」
「あははっ!!」
「コイツ等運動してないから汗かいてないんだろ」

 部屋に入った俐音の第一声に対して笑う成田と緒方に、冷静に答える小暮。

 なるほど、と俐音達の突然の出現に口を開けたまま固まっている数名の部員を見た。

 彼等は制服のままテーブルを囲むように四人が椅子に座っていた。
 それだけならミーティングだと取れそうだが、テーブルいっぱいに麻雀牌が転がっているのだからそれも有り得ない。

「あちゃちゃー、もしかしなくても賭けマージャンじゃない?」
「わざわざ学校でしなきゃいいのに」
「バレるかバレないかの瀬戸際スリルが欲しかったんじゃないの」
「で、バレたと」

 全員、相手を馬鹿にしているのを隠しもしない。
 さっきまで俐音の隣にいたはずの福原は、いつの間にか部室の壁に置かれているロッカーを勝手に開けて中を覗いている。

「おま、お前ら何なんだよ、勝手に入ってきやがって!!」
「遅っ、こっちがびっくりした!」

 緒方の言う通り、確かに反応が遅い。
 いきなり入って言いたい放題言う緒方達に呆気に取られていたが、やっと拙いことになったと判断したらしかった。

「えーと、僕達は理事長に頼まれて柔道部の部費が正当に使われてるか調べに来た一般生徒達でーす。全員ひっ捕らえるように言われてるんで、お縄を頂戴しまーす」
「はぁ?」
「ガサ入れでーす
「家宅捜索でーす……あ、あった」

 ロッカーをごそごそと漁っていた成田がダンボールを一箱取り出した。

「あ! それは」

 気づいた部員が駆け寄るより早くダンボールをひっくり返して中身を全部床に落とす。
 音を立てて散らばったのは全てDVD。しかも一見してそれと分かるアダルトものばかり。

「え、なに。もしかして部費をこれに使ってた……とか?」

 自分の足元に落ちたDVDを拾い上げて俐音は眉間に皺を寄せる。

「あと賭けマージャンの掛け金でしょ」
「く……くだらない。くだらなさすぎる!!」

 持っていたDVDを床に叩きつけ、さらに足で踏みつけた。
 ベキリと音を立ててパッケージがひしゃげた。

「ま、物的証拠出てきちゃったんで、これ全部没収ね」

 DVDを拾っては雑にダンボールに放り投げながら緒方が言った。
 さっきからニコニコと笑顔が崩れず、実に楽しそうだ。



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