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 ていうか物申されるのか。怖すぎる。

 だけどこのままここにいれば、当然のようにまた手伝いをさせられるのは目に見えている。

 緒方の勢いに任せて出て行った方が身のためだと思い黙って従った。
 誰か助けてくれと頭の端っこで考えもしたけれど。

 ドアの前で、両手が塞がった緒方は立ち止まり、俐音に開けろと促す。

 素直にドアノブに手を掛けた俐音が力を入れる前にドアノブが回ったかと思うと内開きの扉が動いた。

 間一髪で後ろに退いて避けたのだが、よろけて緒方にぶつかってしまった。

「リンリンってこういう事よくあるよね」
「不可抗力です」

 俐音の注意力の行き届かない突発的な事故の遭遇率の高さは自覚しているが、こればかりはどうしようもない。

 そうしている間にドアを開けた生徒はフラフラと部屋の中に入ってきた。

「有り得ない……この学校マジで磁場狂ってますよ」
「安心しろ、狂ってんのはお前の方向感覚だけだ」
「違うっつの、何でそう篤志先輩はオレを方向音痴にしたがるんですか。マジ有り得な……あれ? どちらさん?」

 目の前にいる俐音達を完全に無視して篤志と会話するものだから、もしかして陰険なイジメだろうかと思ったほどだが、どうやら本当に気づいてなかっただけらしい。

 そして何故か彩をしげしげと珍しい動物でも観察するかのような目で見たかと思うと、その手を取った。

「何スかこの子! どこから拾って来たんスか!?」
「人間はそうそう落ちてないぞ、佐原」

 突然興奮しだした佐原という男に、巧は書類から目を離さずに冷たく言い放つ。
 訊いたくせに佐原は返事を聞いていないらしく、彩に笑顔で向き直った。

「おんなじ一年じゃん。何クラス?」
「Aー!!」

 俐音はいつまでも彩の手を握って離そうとしない佐原の腕に手刀を入れて突き飛ばした。

「厭らしい手つきで触るな変態!」

 倒れて床に尻餅をついたままの佐原の前に立って上から睨みつける。
 ふんと鼻を鳴らし、呆けた顔をして見上げてくる佐原をそのままに出て行こうとした。

 が、足を引っ張られ音を立てて見事にすっ転ぶ。
 顔を咄嗟に庇った私は偉い、と自分で褒めた。

 そして足を見やれば佐原の手が巻きついているのが目に入って、ホラー映画みたいな体勢に鳥肌が立つ。



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