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「大体さ。金持ち校とか言われてる割に修学旅行が国内って、しかも新幹線ってどうよ」
「それを生徒会に言われても知らないよ。理事長に言って。あの人が理事になってから国内旅行に切り替わったらしいから」
「『十代のケツの青い若造が海外旅行だぁ? 笑わせんな、日本の事も録に知らないくせに生意気なのよ! 熱海でいいじゃない!』って怒鳴り散らしたらしい」
「ただの僻み」
「僕ザマスが無視されたのが悲しい」
「タイミング遅すぎだろ」

 巧は馨が持っていたポッキーの箱から一本取り出す。
 完全に話が逸れてるな、と気付いたのは聡史と壱都。
 聡史は敢えて切り出すことはせず、壱都は黙って千春を見た。

 沈黙の中の圧力に耐えかねた千春が片手を上げて止めろと促す。

「俐音にはホント、書類と伝言届けてもらっただけだよ。ていうか本人以外にも壱都や緒方の了解が必要なんて知らなかったよ、面倒」
「なにその言い方! リンリンは放っておいたら次から次へと面倒事引っ提げて帰ってくるから、こっちで管理してないと大変なんだよ! キッチリしとかないと僕にまで影響でてくんの!」
「馨の言い方だと鬼頭自身が面倒、みたいになってるぞ」

 こくこくと頷く壱都の表情が不思議で、馨は人差し指で頬を押した。

「何故に笑ってる?」
「俐音可哀相だから」
「だから? だからって言った? この根っからのサドっ子め!」
「馨に言われたくないんだけど」

 全くだと言わんばかりに後の三人は頷く。
 気に食わない馨はむっと口を尖らせた。

「それより、分かってると思うけど俐音は生徒会に入らないからね」
「まぁそう言ってるけど、でも……」
「あんましつこいとどうなるかって事もちゃんと分かって行動しなよ」

 これは警告。
 最後通告。

 そんな響きのある物言いだった。
 巧と千春は以前パイプイスを蹴り飛ばした壱都を思い出した。

「聡史が何しでかすか」
「俺か! 俺は何もしない!」
「つーかお前らいい加減静かに! ……してくんねぇ?」

 語尾は消え入るように発したのは、今まで窓際で丸まっていた篤志。
 顔色は真っ青で、瀕死の状態だ。

「まだ薬効かないの?」
「初めっから酔うって分かってんだから飲んで来いよな」

 冷たい友人からの言葉に返す元気もなく窓に頭をくっつけた。
 そんな辛そうな篤志を見て壱都が一言。

「そんなに辛いなら出せばいい」

 無表情にそれだけ言うと立ち上がった。

「イッチーどこ行くの?」
「自分とこ。寝る」
「じゃあ着いたら一緒に写真撮ろうね、リンリンに送るやつ」

 立ち止まる事なく手だけをひらりと振って、壱都はそのままドアの向こうに消えていった。




end



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