その時、彼らは



「だーれがチクりやがったぁー!」

 新幹線の車内、巧の声が響き渡った。
 携帯電話を握り締め、怒りに肩が震えている。

 一緒に座っていた面々はそんな巧を目を丸くして見ていた。

「なに?」

 ポッキーを加えながら馨が言うと、ぎし、と振動するほど勢いよく背凭れに倒れこんだ巧は額を押さえた。

「俺らが修学旅行だって悪魔に入れ知恵しやがったアホがいる」

 携帯電話が振動して侑莉だろうかと確認してみれば、予想に反して幼馴染で第二高校の生徒会長、守村 美保からのメールだった。
 内容は至極簡単。

 何故旅行だという事を言いやがらないという文句を朗々と並べた後、高級なお土産の要求、それだけ。

 巧から電話を奪い取ってメールを読んだ千春は、実に彼女らしいと苦笑いしか出てこない。

「教えたのって俐音しかいないよね、タイミング的に」
「俐音って……鬼頭かあんにゃろ」
「何で安部が俐音って呼んでんの、ていうか何でここいんの。クラス違うじゃん号車向こうじゃん」
「遊びに来ただけだよ、ね。壱都」

 話を振られた壱都はこくりと頷いた。そして

「なんで千春が俐音って呼んでるの」

 同じ質問を繰り返したのは壱都で、感情の籠もらないその問いかけに千春はさり気なく視線を逸らす。

 何でと言われれば、それは苗字より先に名前の方を知ったからで、そもそも壱都が呼んでいるのを聞いたからだ。

 たったこれだけの事でどうしてここまで反感を買わなければならないのか。

「それより、なんで鬼頭の名前が出てくるんだ?」

 聡史にはメールの相手が誰だかは分からないが、巧の知り合いと俐音との繋がりがあるとは思えない。
 素朴な疑問だ。

 だが今度こそ、巧と千春はぎくりと体を固くした。

「色々と事情があって鬼頭には今日、第二高校までおつかいに行ってもらってる」
「はぁ!? ちょっと何勝手にウチのリンリンをパシリに使ってくれてるザマス? 誰の了承を得たザマス?」

 馨は身を乗り出す。
 「本人だよ、本人」と冷静に返すも馨は取り合わない。



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