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「鬼頭ー、次これな」

 どさりと目の前に置かれた書類の山に俐音は首を傾げた。

「俺どうしてこんな事やってんだっけ?」

 特別棟から中庭を突っ切って教室に戻る途中、後ろから伸びてきた手に拘束され、連れてこられたのは生徒会室。

 何の説明も無いままイスに座らされて、更には当然のように書類整理をさせられている。

 全員が慌しく作業に追われていて話しかけることさえ躊躇われ、大人しくホッチキスで冊子を作る事二十分。

 ようやく終り、黙って返ってしまおうと腰を浮かしかけたところに、まるでわんこ蕎麦のようなタイミングの良さで次を足されてしまったというのが今の状況。

「なんで俺が当然のように手伝わされなきゃなんないんですかね!?」
「気付くのおっせー」

 副会長である篤志は、二十分遅れてやってきた抗議をたった一言で切り捨てた。

「気付いてましたよ! だけど言い出せない空気だったじゃないですか」
「鬼頭……使い易いって言われないか?」
「俺は文房具ですか、言われませんよ」

 歩いていたところを拉致されて、あまつ有無を言わさず手伝いをさせられていたのに、周囲が忙しそうだからと文句も言えずに作業をしていたとは、なんて人の良い。

「諦めろ鬼頭、あの時あの場所にいたのが悪い」

 こちらも一段落した会長の巧はイスの背凭れに倒れこんだ。

「特別何かした覚えありませんけど?」
「俺が小暮でも拉致ってこき使ってやろうと思ってたところに鬼頭がいた。猫の手も借りたい忙しい上、一分一秒も無駄にしたくない。だから教室まで戻るのを断念して鬼頭で手を打ったというわけだ」
「拉致ったくせに、仕方ないから妥協してやるみたいな言い方やめてもらえませんか」

 失礼にも程がある。
 俐音が睨んでも意に介さない巧に安部が非難の目を向けた。

「幾らなんでも言い方ってものがあるだろ、仮にもこの子おん――」

 ドス、と鈍い音がするくらい力を込めて俐音は安部の脇腹に一発拳を叩きつけた。

 コイツ今さらっと私の素性バラそうとしたよな? 女って言おうとしたよな?
 しかも仮にもってどういう意味だ。

 無言ながらも俐音の文句がありありと伝わってくる。

「……意外と力ある、んだね」
「どうも」
「あははは! ナイス!」

 どうやらさっきの一発がお気に召したらしい篤志は手を叩いて笑っている。

 安部は殆ど八つ当たりを受けた形だが、それで随分と機嫌が上昇した俐音はやっとここにいるメンバーを見た。
 二年生が三人と、一年生は直貴だけ。



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