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 住宅街を抜けたところに建っている神社は初詣とあって人が多い。
 長蛇のようにうねった列に並ぶのかと思うとうんざりする。

「私ここで待ってるから行ってらっしゃい」
「え……俐音せっかく来たんだから……」
「そうだよ。ほらほら並んでる間オレがしりとりしてあげるから」

 俐音は振った手を彩と穂鷹に掴まれて、列の中に引きずり込まれた。
 露店のたこ焼きでも食べてゆっくりしてようと思ったのに。

 そんな文句もしりとりが始まれば鳴りを潜め、どこかへ消えていた壱都と緒方が両手に白いパックを持って戻ってくるまで暫く遊んでいた。

 どうやら抜け目なくたこ焼きを買いに行っていたらしい。

 二人が持っていたパックを配り終えても俐音の手には何も無い。
 隣にいた彩も渡されなくて、きょとんとしている。

「……どんなイジメですか」

 エサを目の前にされた犬宜しくキラキラと目を輝かせて待機していただけに、落胆の色を隠しきれない。

「あのねぇリンリン。どうしてたこ焼きに爪楊枝が二本ついてると思う? 二人で仲良く食べるためだよ!」
「はぁ……。え?」

 要領を得ない俐音に、緒方はやれやれと首を横に振った。
 「絶対違う」とフタを開けながら呟いた壱都の言葉は綺麗に無視する。

「駒井くんは聡史と一パック。リンリンはその辺からもらってね。僕はこれ」

 その辺、と穂鷹達を指し、自分はまるまる一パック食べる気らしい。

「はい、俐音」

 なんてちゃっかりしてる人だ。
 呆れ半分、尊敬半分で緒方を見ていると、壱都がニコニコと笑って一個を差し出し出して来て、深く考えずにそれを口に入れた。

 その瞬間、感じた高熱に危うくたこ焼きを地面に落とすところだった。

「おいしい?」

 この状態を見ていながら、なお訊いてくる壱都に涙目になりながら無言で訴えた。
 それどころじゃないんだと。

「落ち着いて俐音ちゃん、大丈夫?」
「う、うー……」

 背中を摩って心配気に顔を覗き込んできた穂鷹に、漸く飲み込んだ俐音は何とか頷く。

「壱都先輩わざとでしょ!?」
「まさか」
「絶対わざとだーっ!」

 二撃目を恐れて穂鷹の背中に隠れながら壱都を威嚇していると、背後から頭を撫でられ振り向くと響がいた。

「お前学習能力無さ過ぎだろ。舌、火傷してないか?」
「……大丈夫」
「そりゃ頑丈だな」
「ええそうですよ、丈夫な作りしてるんですよ」
「なら」

 火傷してないんなら大丈夫だろ、と爪楊枝に刺したたこ焼きを俐音の前に出した。
 食えという事なんだろう。
 まだ湯気の立つ丸い物体と、響の顔を交互に見てから今度は用心しつつまた口に入れた。

「僕さっき爪楊枝は二本ついてるって言わなかったっけ? リンリン餌付けされてるように見えるよ。ほら、あれが正しい食べ方」

 そう言った緒方の視線の先にいた見本である小暮と彩は仲良くたこ焼きをつつきあっていた。

「仲が良さそうでなんか腹立つ」
「緒方先輩…自分でやれって言っておいてそれはあんまりなんじゃ……」

 手渡された爪楊枝に穂鷹が持っていたパックから一つ突き刺して食べながら二人を眺める。




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